サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

白ワインのバトナージュ

今、登美の丘ワイナリーの醸造棟では収穫されたぶどうを仕込みつつ、発酵を終えたワインに対しての様々な仕事を並行して行なっています。今回はその中でも白ワインのバトナージュについてお話します。
 

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白ワインは搾汁した果汁に酵母を入れてからおよそ2週間でアルコール発酵を終えますが、その発酵中に、酵母が果汁のなかの糖分をアルコールに変えるとともに炭酸ガス(=二酸化炭素)を生じます。
この時期は、発酵を終えたワインとともに、まだまだ発酵中のワインが同じセラー内にあるのですが、多数の樽発酵をまとめて行なっているセラーは、実は危険なのでむやみに入室できません。
なので、発酵管理を行なうのに際しても、まずセラー内部に充満した二酸化炭素を強制排出して換気をしてあげて、必ず酸素濃度を確認し安全を確認してからでないとセラーに入室してはならないのです。
二酸化炭素の排出には結構な時間がかかりますが、スタッフの安全を確保するのが最重要事項です。

 

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 発酵中のワインは、樽の中でどんどん炭酸ガスを生じさせますから、樽を栓で密閉してしまうと炭酸ガスの内圧で爆発するか、栓が飛んでしまうことになります。かと言って栓を全くしないと異物が入ったりするリスクがあるので、二重構造になったガラスの「発酵栓」を使用しています。下側のドーナツ状の受けに水を張って、下から上がってくる炭酸ガスが上栓を持ち上げては外に逃げ、ポコポコ・カチカチとにぎやかな音を立てながら上栓が上下動を繰り返して炭酸ガスだけを樽から逃がしていきます。
非常に活発に樽の中で発酵している様子が、発酵栓の様子を見ていると非常によくわかります。
それが多くの樽で起こっているのですからセラー内に炭酸ガスが充満するというのも納得できます。
 

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そして、片方に整列し発酵を終えた樽には「バトナージュ」という作業を行ないます。
発酵を終えて沈殿した酵母を樽の中で撹拌してあげるのです。底に沈んでオリとなった酵母をゆっくりと動かして上部の上澄み状態となったワインと混ぜてあげます。決して乱暴に撹拌してはいけません。ゆっくりやさしく樽の中のワイン全体が均一になるようにバトン(=Buton=棒)で揺り動かしてあげるイメージです。これによって、発酵を終えた酵母が自己分解したアミノ酸系の旨味が、ワインの旨味として移行することを促進します。
樽のダボ口から様子を見ると、最初樽の内部の黒さしかわからない白ワインの上澄みの色が、バトナージュによって、うすいベージュ色に混濁していくのでよくわかります。
 

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そして、この「バトナージュ」は樽発酵をしている白ワインに限った話ではありません。
タンクで仕込んでアルコール発酵が終了した白ワインにも「バトナージュ」を行なってあげます。
この日は、今年最初に仕込んだ「ジャパンプレミアム リースリング・フォルテ」でのバトナージュを行いました。
ただ、タンクでのバトナージュの場合、樽とは規模感が異なります。バトナージュのバトン(=棒)も、樽の場合では1.5mくらいのステンレス製でしたが、タンクのバトナージュで用いるバトンの場合、3mを超える長さで、登美の丘ワイナリーで使用してるのは、日本ワインらしく竹製の棒です。この長い棒を発酵タンクに差し込んで撹拌するのですが、その前に発酵室の天井や壁や配管や周囲のスタッフにぶつからないように、物干し竿以上に長い棒を扱うのだけでとても気を遣います。
そしてなにより、タンクの規模で撹拌するワインの容量は樽の時と比べて桁違いに多いために、バトナージュの撹拌作業自体が非常に重くて大変です。この場合もジャバジャバとかき混ぜるのではなく、底に沈殿しているオリを全体に行き届ける感じでゆっくりとやさしく行ないます。樽の場合とは違って、タンクの撹拌作業ではオリが底から湧き上がってくるような迫力ある様子が視覚で確認できます。うっすらと澄んだワインが撹拌が終了する際にはしっかりと混濁して、全く別物になったかのようです。そしてまたワイン中の酵母はゆっくりと下に沈殿していきます。アルコール発酵終了直後の数週間は週に2回程度、それから週に1回程度と、ワインの状況を判断してバトナージュの頻度を変えていきます。
 

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ワインづくりはこのようにして、アルコール発酵が終了したら終わりなのではなく、ワインのそれぞれのタイプに思い描く味わいに向かって、日本ワインとしての味わいをさらに美味しくしていくために、様々な取り組みを引き続きずっと行なっていくのです。ワインの状態を必ず見て、その時々に何をしてあげるのがいいのか考え、ワインを育てていきます。しっかり導いてあげる時もありますし、やりすぎないほうがいい時もあります。時には何もしないほうがいい時もあります。常にワインと向き合いながら、ワインと接していくのですが、それがワインづくりの難しさでもあり、ワインづくりの楽しさでもあります。

 


樽発酵・樽熟成でバトナージュしたシャルドネの代表例
   「登美の丘 シャルドネ 2013」

 

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タンク発酵・タンク熟成でバトナージュした
「ジャパンプレミアム リースリング・フォルテ 2014」

 

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