富士の初冠雪が例年よりも11日遅いという報道が聞こえる中、登美の丘ワイナリーでも例年より遅れて、メルロの収穫を完了しました。
登美の丘ワイナリーでは、赤ワイン用のぶどうについて、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、ブラック・クイーン、ピノ・ノワール、マスカット・ベーリーA、ビジュノワールの8種類のぶどう品種を栽培していますが、メルロはそのなかでも早熟系にある品種です。今年は、9月下旬の日照不足により、熟するのがやや足踏み状態になったため、昨年に比べると1週間くらい収穫を待ち、10月に入ってぶどうがしっかり熟してくれたのを確認しての収穫となりました。
棚仕立てで栽培している区画のメルロでは、雨よけにトンネルを設置しているので、ぶどうがトンネルの下に列になってつながっています。観光農園でよくあるぶどう狩りでの棚仕立てではぶどうがあちこちになっているのと比べると、きちんと1列にぶどうが並んでくれているので、収穫は列にそって移動していけばいいのですが、傾斜地にあるため棚と地面の高さが上下しますし、やはり自分の肩の高さより高い位置のぶどうを切るのは負荷がかかります。しっかりと選果も行ないつつ、ずっと収穫作業を進めます。
B-10と呼ぶ垣根仕立ての区画がメルロでの最後の収穫です。
前日の棚仕立ての区画と異なり、垣根仕立てでは腰より低い位置のぶどうを収穫します。あるスタッフは立ったまま、あるスタッフは腰につけた「おったま下駄」というバスケットボールを椅子代わりにして収穫を進めていきます。
天候に恵まれた秋の涼やかな澄んだ空気のもと、スタッフは時には談笑しながら、朝から夕方までぶどうの収穫にあたりました。
このB-10区画では、さらに細かく区画を分けて様々な栽培の工夫を行なっています。糖度で20度前後の他の区画と比較して、21.7度の試験区画もあり、その栽培管理手法の成果といえるかどうか検証を続けますが、今後の品質向上の手がかりもつかみつつあります。
ぶどうの糖度を測定するサンプリングでは、必ずぶどうの実を実際に食べてみて、赤ワインの場合は、糖度とあわせて種が熟しているかどうか確認するというお話(「収穫のタイミングを決めるために畑ごとにぶどうをサンプリングしています。」)を以前にしたかと思いますが、ちょっとだけ詳しく「種の成熟」について、みてみましょう。
ぶどうの小さな実を切ると、中にはしっかりと種があります。
赤ワインの場合、ぶどうの種も皮も実も一緒に発酵していきますが、その発酵の過程で、果汁の中の糖が酵母によってアルコールと炭酸ガスになるアルコール発酵とともに、ぶどうの果皮から香りや色素、種からは味わいの骨格となるコクや渋味の成分であるタンニンが抽出されます。
その際に、種が未熟な状態だと、ワインに不要な、荒々しくきついタンニン分をもたらしてしまいます。未熟な種は見た目にも緑色で、食感はやわらかく、舌に非常に強い収斂味をともなった渋味を感じます。この渋味が赤ワインに存在してしまうと飲みづらい味わいとなってしまいます。
やがて、種は次第に熟していくにつれて、色は茶色に変化していき、そして食感も硬くなり、噛み砕くとパリッとした音とともに、甘い香りも感じるようになります。そうした状態の熟した種に由来する上質なタンニンは、ソフトでふくよかでシルキーな味わいに寄与してくれます。
メルロの種の変化を見た目だけですが、ちょっとだけご覧ください。
富士の雄大な姿を背に、B―10区画のメルロの収穫を進めています。
この区画でメルロの収穫が完了し、このあと、赤ワイン系では最後のカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫まで、まだまだぶどう畑では気が抜けない日々が続きます。
メルロ使用した登美の丘ワイナリーを代表する赤ワイン
「登美の丘(赤)2012」