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登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

赤ワインの発酵管理

今回は、先日仕込んだメルロの赤ワインとしての発酵管理について、レポートします。

 

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赤ワインの発酵とは、簡単に言うと、皮の黒いぶどうを果皮も種も実も全部一緒に醪(もろみ)として、発酵させるところが、果汁だけを発酵させる白ワインとの大きな違いです。そして、果皮からの香りや色素、種からのコクや渋味をワインとしていかに自然に抽出し、その土地のぶどう本来の個性や味わいを引き出してあげるかということが大切になります。

 

そのためには、まず仕込んでいるタンク内の赤ワインの温度を毎日朝夕2回必ず確認します。
果汁に含まれる糖を酵母がアルコールと炭酸ガスに分解する際に熱が発生するのですが、ワインの温度が高くなり過ぎる状態が続いてしまうと、醪の中の果皮や種からイヤな香味成分が出てくる懸念が大きくなります。なので、温度管理は大切です。
そして、温度コントロールのできるステンレスタンクでの発酵に意味が出てきます。ステンレスタンクはその外周に配管が巡らせてあって、温度が上昇するとその配管に冷却水を流して発酵中のワインの温度上昇を抑えることができるのです。

 

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そして、発酵がどれだけ進んだかについては、ワインの比重を測定して確かめます。
糖を含んだ果汁は、当然ながら比重は重く、その糖がアルコールに分解されて発酵が進んでいくにしたがって徐々に比重が下がっていきます。
アルコール濃度によって、種や果皮から抽出される成分も速度も異なってきますから、その比重の値が発酵中の作業を様々にコントロールしていく重要なキーとなったりします。
 

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宝石のルビーやガーネットにたとえられる美しい赤ワインの液色は、ぶどうの果皮の色素に由来します。
本来、果皮からの色素抽出はワインの液体に果皮が十分に浸っている状態が望ましいのですが、アルコール発酵によって発生する炭酸ガスがぶどうの果皮や果肉を含んだ粒をも醪(もろみ)の表層部・上層部へと持ち上げてしまいます。これを果皮の帽子と書いて「果帽(かぼう)」と呼びます。果帽として醪の上層部に持ち上げられた果皮は、ワインの液体との接触部分が少なくなり、抽出が困難な状態となります。なので、発酵タンクの下のほうから発酵中のワインの液体を抜き出して、果帽の上からかけてあげるという作業を行なってあげる必要があります。
これは赤ワインの発酵管理の中で重要な作業のひとつで、「液循(えきじゅん)」と言ったり、フランス語でRemontage(ルモンタージュ)と言ったり、英語でPumping over(ポンピングオーバー)と言ったりします。
上からワインの液体をかけるのにしても、まんべんなく果帽全体にかけてあげないといけないので、ポンプ配管のワインを落下させる口には、簡単に回るプロペラが取り付けてあります。ポンプによって持ち上げられて流れ落ちるワインの流動が動力となって、タンク中央に設置されたプロペラが回転しながらきれいに分散して果帽一面に降りかかっていきます。どれだけ液循をするかについては、それぞれのワインメーカーの考え方次第でルールはありませんが、今の登美の丘ワイナリーではあまり強い抽出をせず、自然な味わいになるように発酵中の朝夕2回を基本としています。
 

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また、液循のもうひとつの効果として、発酵中の赤ワインに酸素を適度に与えてあげるという役割があります。
それぞれのぶどうや求めるワインの姿によって、全てに行なっているわけではありませんが、発酵の初期段階でタンクから一旦赤ワインを下のバットに受けてからポンプで上に送るという形で液循を行なうものもあります。バットに流れ落ちるときにワインの液中に適度に酸素を巻き込み、さらに、タンク上部からの果帽への落下の際にも空気に触れることでワイン内に酸素が供給され、その酸素が不要なポリフェノール分と結合することによって香味が変化していきます。発酵終盤になれば、タンクの下の配管から直結してワインを上に送るようにして、酸素の供給をコントロールしたりもします。
 

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ただ、その年ごとにぶどうの状態が変わったり、酵母の活動の状態が代わったりしますので、ワインづくりは、決められたことを単に漫然と繰り返していけばいいというものではありません。品質設計部門のスタッフは、1つ1つのタンクごとにその時々のワインの状態を自分の五感で感じ、そのワインをこの後どうしてあげるのが一番いいのだろうかと考え、醸造スタッフと密に連携しながら、よりよいワインの品質向上のために取り組んでいるのです。
毎日のように登美の丘ワイナリーの醸造エリアにはどんどんぶどうが搬入されてきており、それぞれをきめ細かく仕込んでいくので、その数だけ発酵管理は増加をたどり非常に大変になっていきます。でも、その1つ1つのタンクごとに異なる個性をもったワインたちを慈しみ、見守ってあげて、美味しいワインに導いてあげるのがワインづくりの醍醐味ではないでしょうか。
 

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日本でぶどうを育て、ワインに仕込み、その味わいを作り上げていく登美の丘ワイナリーの取り組みに今後ともご注目ください。
 

 

メルロを主体とした「登美の丘(赤)2011」

 

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