サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ぶどうづくり

収穫のタイミングを決めるために畑ごとにぶどうをサンプリングしています。

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既に一部のぶどう畑では収穫が始まった登美の丘ワイナリーですが、今年の作柄を見極めて、いつ、どの畑のどの品種を収穫していくのか、様々な情報をもとに判断していきます。
その情報のひとつに、ぶどうの状態を示す数値データがあります。糖度や総酸、アミノ酸量、リンゴ酸量などなど科学的に分析して得られるデータは重要な情報のひとつです。
そのために、事前に計画したぶどう畑に毎週ぶどうの粒をサンプリングして回ります。でも、1つの畑を1粒のぶどうをみたところで全体像はわかりません。もちろん1粒ではなく1房でもそのぶどう畑を示す指標にはなりません。なので、1つのぶどう畑のなかで多くのサンプルを集めることが必要になってくるのです。ぶどうの樹も、ぶどうの房の上部か下部かも全てが混在するようにアットランダムに直感で切って集めていきます。「選ぼうとしないことが大切」と栽培リーダーの吉野は言います。手早く、でもあちこち歩き回って、袋の中に切り取ったぶどうを入れていきます
10粒程度を切り取るのを20箇所。ぶどう畑の1区画で200粒以上を集めて分析するのが登美の丘ワイナリーでのやり方です。

 

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それをそれぞれの畑ごとにやるわけです。登美の丘ワイナリーの自家ぶどう園の25ヘクタールにシャルドネもあれば、プティヴェルドもありますし、垣根栽培のメルロもあれば、棚栽培のメルロもあります。それぞれの区画のぶどうの成熟状況を確認して収穫のタイミングを決めるためには大切な作業です。
晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫はまだ先なのでこの日は対象外でしたが、広い場内を半日かけて、それぞれのぶどう畑でぶどうのサンプリングを栽培Gで手分けしておこないました。
 

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ぶどうをサンプリングする間に、ぶどうの状態を観察することも重要なポイントです。カビなどの病害が出ていないか動物たちによる食害がでていないかなど見ている中で、特にメルロに顕著でしたが、ぶどうの粒に穴があいている房をいくつも見ることがありました。
これは、ぶどうの甘い果汁を吸いにハチが皮を食い破った後に、さらに甘い香りに惹かれてアリがやってきて果汁を吸いに来たりした穴で、その穴のあいた粒の中では果汁が腐敗してしまって酸っぱいイヤな香りが出てしまっていました。ぶどう畑にはいろんな生き物たちがいて共生しているので、こういった状況はどうしても避けられませんが、ぶどうが全滅するほどのことではありませんので、人間が収穫するときに1房1房を観察して、不健全な箇所を必ず落す作業をします。
 

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粒の内部で腐敗して酸っぱい匂いを出した液体がたまっている状態

 

とにかく自分の五感をつかってぶどうを感じるため、サンプリング中はぶどうを食べます。皮の色づきはどうか粒の感触はどうか、果汁としての甘さや酸味はもちろん、皮にある香りや果肉の食感、種の食感や渋味など、ぶどうの成熟の度合いを確認します。酸味の質はどうか、黒系のぶどうであれば、種はどこまで熟しているのか、そんなところをそれぞれの畑で必ず確認するのです。収穫のタイミングを見極めるためには決して欠かせない情報がぶどうを実際に食べてみることから得られます。ここでも、ひとつの畑を1粒では到底判断はできないので数箇所ランダムに粒を取って食べてその畑のぶどうの成熟状態を全体像を頭に入れます。あとで測定される分析データと付き合わせるために。それぞれの畑で先週と違ってきているぶどうの今の状態を敏感にコメントします。

 

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この日は、黒系14箇所、白系6箇所の20の区画のぶどうの分析用サンプルが、栽培Gから品質Gに持ち込まれました。
品質Gでは、最初にそれぞれの袋ごとに果梗を外してぶどうの粒だけにして、その粒の数を数えます。畑でサンプリングを集めているときには、直感で切っていきますから決して200粒を数えてるわけではありません。当然ながらかなりの幅でブレます。なので、数を数えるのです。そしてその全ての粒の重量を測って、1粒平均の重量をまずは確認します。
それから果汁を絞って、糖度や酸度を分析機器にかけて測定していくのですが、登美の丘ワイナリーの品質Gでは、ぶどうのサンプルを絞る時に、ラーメン屋にあるニンニクつぶしのような形のした絞り器を用いています。ぶどうの粒を入れてから絞るときに粒が中でプチプチと潰れるのが感触として伝わってきます。ちょっと楽しい感じです。品種によって時期によってその感覚が違ったりするのもおもしろいです。でも、20ものサンプルのぶどうを絞っていくのは実に重労働で根気も要りますが、大変地味な作業です。でも、成熟していくぶどうのデータが楽しみでもあります。
 

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たとえばこの日のメルロのサンプルではまだ収穫予定の2週間前ですが、糖度はすでに20度を超えていました。

 

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通常の生食用のぶどうの糖度は15度前後と言われています。先日スーパーで購入した巨峰の糖度を測定したら14.2度でした。それでもとっても甘く感じられました。20度を超えているメルロはとても甘いですが酸もしっかりありましたので、甘ったるいという感じはしません。でも絞る作業でついた果汁で手や器材はベトベトになってしまいます。

 

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黒系ぶどうについては、赤ワインとしての色素がどれほどぶどうについてきているのかも分析してみています。

 

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そのような様々な角度からぶどうをサンプリングして分析することの情報を集め、畑で感じたぶどうの状態や人間の五感による感覚で収穫のタイミングを決めます。
日照量や降水量など天候要因は日々変化します。気温の変化などもぶどうの成熟に非常に影響を与えます。天候のいいことが何よりですが、今年は8月後半から日照量が少ないのは事実です。最近パワー不足の「てるてる坊主」に、「もう少しがんばってくれよ」と声援を送りたくなります。これも日本ワインらしいぶどうづくりなのではないでしょうか。

 

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