先日、山梨大学生命環境学部の特別講義が登美の丘ワイナリーで行なわれました。
登美の丘ワイナリーでは、山梨大学と何年も前から、実際のワイン生産者としての特別講義のカリキュラムの協力をさせていただいてきました。2代前の登美の丘ワイナリー所長である大川による特別講義。毎年30名前後の参加者ですが、今年は就職活動のスケジュール変更により、参加者は17名。それでも、参加した山梨大学生命環境学部の学生さんたちは非常に熱心に大川の説明に耳を傾けていました。
この特別講義は2日連続のカリキュラムで、初日には、ワイン醸造に関する科学的で専門的な話や、実際に企業の現場としての品質を作りこむことの模擬演習を実施。大川からの「ものづくりはヒトづくり」であるという話などは、将来のワインメーカーになるかも知れない学生さんたちにとって、大学学内の教授たちの講義とは全く質の異なるものだったに違いありません。ちなみに、大川はドイツのガイゼンハイム大学に留学し、帰国してワイナリーで栽培技師長・所長を歴任してきたこともあり、ワインづくりを語るその話は非常に奥が深く、また熱い情熱をもって語ります。大川は元来、体も大きいのですが声も大きいのが昔からの特性で、そういう意味でも、学生さんたちにはとても新鮮に映ったかも知れません。今回の実戦的な講義内容は山梨大学の学内でも評判になっていたそうです。
そして、2日目は甲府市内にある山梨大学のキャンパスを飛び出して、バスで30分の登美の丘ワイナリーに移動して、実際のワインづくりの現場での講義となります。
まず、最初は登美の丘ワイナリーの歴史とともに日本のワインづくりの歴史的な話が俯瞰的に展開され、学生さんたちは食い入るように聴講されていました。
そして、破砕場や発酵室で、実際のワインづくりの現場において、それぞれの設備の果たす役割と具体的な機能、そしてその背景にあるワインづくりの思想や考え方、何よりもワインづくりの教科書には書かれていない現場ならではのオペレーションなどを経験に基づいて話していました。これからワインづくりを志向する学生さんたちにとってかなり刺激になったと思います。実験室の設備とは違う、メーカーの生産設備での発酵管理の注意点の違いなどもわかりやすく解説していました。
また、樽熟庫においても樽の産地の話や構造、現場でのハンドリングについても詳しい解説がされました。学生さんから「樽の穴はなぜ鏡板のところではなく側面についているのか?」という質問についても、酸素と接する表面積を最小限に抑えることができるからであると答えておりました。樽の容器としての特性と物理的な形状、ワインの特性、そして品質面の観点など様々な角度と視点からの詳しい解説にみなさん納得されていました。さらにワインにとどまらずブランデーやバーボンの樽の話など、どんどん話が展開して、他ではなかなか聞くことができない貴重な話ばかりしていました。
さらに、眺望台での自然環境の話や圃場でのぶどう栽培の話でも、気象学的・地理学的な構造によるぶどうづくりに対する環境の話や、20年以上も前から予測していた地球温暖化の影響の話、ぶどうの生育状況についても植物学的な話に基づく詳しい解説など、非常に多岐に渡る話の展開と実際にぶどうの樹を見ながらの実習的な講義でした。
午前中に登美の丘ワイナリーの場内を巡り、午後からは大学のキャンパスに戻ってからテイスティングの講義を行いました。
明治の頃から産学一体となって日本のワインづくりを科学的なアプローチから支えてきた大学ですから、ワインづくりを志向する学生さんたちが多く在籍する山梨大学生命環境学部。
その山梨大学生命環境学部の特別講義に登美の丘ワイナリーが協力させていただき、これから将来のワインメーカーになるかもしれない学生さんたちのお役に立てることは、我々としてもうれしい話だと思っています。今回参加された学生さんの中から、世界を感動させる日本ワインをつくりだすワインメーカーが生まれることを楽しみにしています。