先日、登美の丘ワイナリーでは、スペインから ラモン・ヴィアダール氏をお迎えしました。
ラモン・ヴィアダール氏は、スペイン醸造家連盟の前理事長で、現在も多くのワインメーカーの技術顧問をする一方で、タラゴナの大学でワイン醸造学も教え、研究者として、多くの科学論文、書籍や記事の執筆も行なっておられます。
また、OIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)の醸造分析分野の専門チームのメンバー、カヴァ統制委員会、カタルーニャワインメーカー協会、カタルーニャ食品科学協会等のメンバーなども務めておられ、加えて、スペイン国内はもちろん、Challenge International du Vin(フランス)、Vinitaly(イタリア)などの権威ある国際ワインコンクールの審査員としても活躍されている方です。
ご夫婦で仲良く日本のワイナリーを視察されました。
まずは、登美の丘ワイナリーの全体像のご説明をした後、ぶどうの実る自家ぶどう園へ。
眺望台からの景観は、あいにくの雲が周囲の山々を隠していましたが、ぶどう園を駆け抜ける八ヶ岳おろしの風を感じ、この風が夜間の温度を下げてくれるという話をすると「それはぶどうにとって非常にいい条件ですね」とおっしゃっていました。
さらに、眺望台を降りて、ぶどうの近くまで行くと、ヴェレゾンのまだ来ていないカベルネ・ソーヴィニヨンやほとんどが着色完了したメルロの熟度を確認されたりしました。また、登美の丘ワイナリーではプティ・ヴェルドの可能性を感じ、今年栽培面積を増やしたと言うと、「最近、スペインやイタリアでも注目しているワインメーカーがいるが、ここでプティ・ヴェルドがいいパフォーマンスを示しているというのは非常におもしろい話だ」と興味深そうにされてました。
また、眺望台すぐ近くのトンネルやグレープガードについては初めてご覧になった様子で、「降水量の多い日本での様々に工夫された栽培の様子は、私にとって、とても興味を惹かれる」とおっしゃっていました。さらに1つ1つのぶどうの房に傘をかけている様子を見たラモン氏は、「とんでもなく労力がかかりますね」と感心されていました。「昨年来場されたアルゼンチンのワインメーカーからはクレイジーと言われました」という話をすると、ラモン氏も「私もそう思う」と、全員で大爆笑。「でも、この土地でぶどうのために人間のできることはできる限りしてあげたいんです」というと、非常に大きくうなずいておられました。
また、棚仕立てのぶどう畑では、スペインでも北部地方で降水量の多いところでのぶどう栽培では、同じような棚仕立てをしているところがあるとのお話。でも、棚仕立てのぶどう樹に雨よけのトンネルを設置してぶどうを守っている様子には非常に熱心に写真を撮っておられました。
そして、2010年にOIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)に品種登録された甲州種のぶどう畑でも、初めて見る甲州種ぶどうに興味津々で、まだヴェレゾン前で着色していない状態でしたが、ぶどうの房の大きさや実のつき方を観察されていました。
その後、醸造棟をご覧になった後、ワインショップのテイスティングカウンター前のテーブルで、日本ワイン8種類をテイスティングされました。
甲州というシルクロードを渡ってきた日本固有品種。日本で開発されたマスカット・ベーリーA。さらに、メルロやカベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、シャルドネなどの欧州系ぶどう品種も日本で育まれ収穫され醸造された日本ワイン。それらをテイスティングされたラモン氏は「どこかのコピーをつくるのではなく、日本のオリジナリティを大切にして、日本のユーザーのために、様々な工夫をしてワインづくりに取り組んでいるのは、とても素晴らしいと感じました。そのスタイルはきっと成功につながっていくことでしょう」
「個人的には、岩垂原メルロが一番好きなワインです。登美(赤)のプティ・ヴェルドの利かせ方もいいですが、バランス的にはこのワインが非常に気に入りました」と言って、岩垂原メルロ2010をスペインへのお土産として購入されました。
そして「近いうちに私のホームページでこの登美の丘ワイナリーを紹介させてください」というお言葉もいただきました。
少しづつでも多くの方々に、この登美の丘ワイナリーの取り組みを知っていただけるよう、「世界を感動させる日本ワインを」という言葉に真摯に向き合い日々取り組んでいます。