今、登美の丘ワイナリーの自家ぶどう園では、ぶどうの傘かけ作業をしています。
この日は、メルロとシャルドネの垣根仕立ての畑での傘かけ作業です。
先日レポートしているようにヴェレゾンが順調に進行中のぶどうたちですが、熟成して健全な果実を収穫することができるよう雨から守ってあげるために、そのぶどう1房1房に、丁寧に紙の傘をかけていってあげるのです。
傘にする紙は、ほぼ正方形の1辺24cmのパラフィン紙。真ん中に向けてスリットが1本入っています。
ぶどうの房の上の首(軸)に紙をかけてあげて、ぶどうの軸がスリットの端の真ん中にきたら、両脇の4分の1のブロック2面が1つに重なるように辺を合わせてあげて、上側に来るほうの辺をホッチキスで止めてあげるのです。1枚1枚、雨をはじくように、ロウをひいたほうの紙の面を外側(上側)にして、丁寧にぶどうの房にかけてあげます。
垣根仕立ての場合、ぶどうの房は樹の枝の左側にも右側にもランダムに実っています。
一方向だけから傘かけ作業をやろうとすると、どうしても傘の掛け残しがでてしまいます。なので、ぶどう樹の右側から傘をかける人間と左側から傘をかける人間が2人ペアになって、「これ、そっちから頼むわ」などと声を掛け合いながら、1つの畝を順々に傘かけ作業していくのです。
摘房する際に、ぶどうの房の整理をしてあげてはいるものの、全ての房が傘かけしやすいように実っているわけではありません。ある房は斜めを向いていたり、ある房は横の枝との間隔が狭かったり。ある房はこの段階でさらに摘房したりと様々です。
傘かけ作業をしていると、「シャルドネは首が短いから傘かけがしにくい」「メルロは首が長いから傘をかける作業が楽」「カベルネ・ソーヴィニヨンはもっと首が長いから、もっと楽だよ」と、普段はぶどうの房の実と枝の間の首(軸)の長さなんて意識することはなかったですが、この傘かけの作業をしているスタッフから、ぶどう品種のそんな違いも教えてもらったりします。
今年2015年、自家ぶどう園のぶどうたちは非常にいい状態で生育しています。
毎日暑い日が続いて、ヴェレゾンも順調に進んでいますが、ぶどうが熟すまで実はこれからまだまだです。日本はこれから秋雨前線によって雨が降ったり、強烈な台風がやってくる可能性もあります。その将来の雨に備えるために、今チリチリと照り付ける太陽の下で、紫外線対策をしっかりして、熱中症にならないように気をつけながら、ひたすらぶどうの房を守ってあげる傘をかける作業に取り組んでいます。
「世界を感動させる日本ワインを」というスローガンのもと、この日本ならではの気候に対して、人間ができることはできる限りしてあげています。決まったことを毎年やっていくというよりも、もっとこうしてあげたほうがぶどうにとっていいのではないか、ワインにした際にいいのではないかとワインの品質を高めるための様々な工夫を考え、実践し、評価し、よりよい品質のための取り組みを登美の丘ワイナリーは常に続けています。