今、登美の丘ワイナリーの樽熟庫では、先日レポートしたように樽熟成を終えたワインを樽空けし洗浄されたワイン樽が整列しています。その整列した姿をみるだけで壮観です。
もう間もなく、今年の仕込みが8月下旬から始まる予定ですが、今年収穫するぶどうから絞った果汁を樽に入れてそのまま樽発酵させるものもあれば、今年収穫したぶどうをステンレスタンクで発酵させて、できたワインを樽に入れて熟成させるものもあります。
ちなみに近年、登美の丘ワイナリーでは、新樽比率を減らす方向にあります。
かつて、登美の丘ワイナリーでは新樽を重要視していた時期がありました。新樽を使用すると非常に様々な「樽からの香味」をワインに与える事ができるからです。上級クラスのワインをほとんど新樽100%で作っていた時期もありましたが、現在では、この登美の丘の「ぶどうそのものの味わい」を生かす事に重きを置くために、新樽を1回使用した後の樽からの風味のやさしい「1空き樽」やそれ以降の2回、3回使った樽の使用比率をあげて、「ぶどうそのものの味わい」とのバランスを考えて使うようにしてきています。
また、樽という容器は、ある意味、非常に手間のかかるたいへんな容器でもあります。
自然の硬いオーク材でつくられた樽は、例えば、平均225Lのバリックといわれる登美の丘ワイナリーで最も多く使用しているものは、最大銅径65cm前後・長さ95cm前後で、樽だけの重量が50kg以上もあって大きくて重くて運ぶだけでもたいへんです。
また、中を洗うためには直径5cmほどの小さい穴を活用するしかありませんが、手は入りませんし長いブラシでも届かないところが沢山あります。そこで、樽空けした樽の中の洗浄は、熱湯を中で噴出させてグルグルと回転させて内部を洗うという方法を取っています。
さらに、洗い終えた樽は、それでおしまい、というわけではありません。洗浄した空樽は1カ月に1回「硫黄燻浄」という作業を定期的に行ないます。空樽の中で硫黄を燃やすことで発生する硫黄ガスには樽の内部をくまなく満たし微生物が繁殖するのを防ぐ効果があるそうです。これは、もともとワインの容器として利用されてきた歴史の中で数世紀も前から続けられていている方法です。
そうして、燻浄された空樽は登美の丘ワイナリーの樽熟庫にしっかりと格納され、次の仕込みのスタンバイを整えているところです。(醸造設備のスタンバイも後日レポートさせていただく予定です)
現在、自家ぶどう園のぶどうたちは非常にいい状態で生育しています。いよいよ、今年の仕込みが始まろうとしています。
今年も「世界を感動させる日本ワインを」とのスローガンのもと、登美の丘の個性を表現すべく、今年のぶどうの状態に合わせて様々なワインづくりの手法を駆使して取り組む様子や、品質を造りこむためのこだわりの様子をこのワイナリー通信でもレポートしますので、よろしければ、またご覧いただけましたら幸いです。