現在 登美の丘ワイナリーでは、ぶどうの摘房(てきぼう)作業の真っ最中です。
「摘房(てきぼう)」という作業は、ぶどうの房の間引きを意味するのですが、登美の丘ワイナリーの広大なぶどう畑の1本1本のぶどう樹について行ないます。
この日は、富士山の眺望がきれいに見えるB-5・6と呼ぶ垣根仕立てのメルロの畑での摘房作業。
このメルロは「1新梢1房」にします。単純化していうと、冬に剪定した1本のぶどうの樹から今年10本の枝が伸び、その枝に平均3房結実している場合、30房のぶどうが実っているわけですが、それを今年伸びた1本の枝につき1房残すわけですから、1本のぶどう樹から実に20房ものぶどうを切り落とすことになります。
この時期に摘房作業を行なうのは、植物の生長サイクルが自分の生長から実に養分を送るように変わる時期にあたり、1本の枝の上のぶどうの葉でつくられた養分を残した1つの房にすべて結集させるようにするためです。そして、この摘房作業により凝縮したぶどう果を得ることができるのです。
摘房作業は、ただ、やみくもに切るのではありません。まず、ぶどうの房の整理から始まります。
ぶどうの樹にたわわに実ったぶどうの房は、実は、もつれ合ったり、ワイヤーにからみついていたり、隣の枝や近くの葉を巻き込んでいたり、密集状態でこんがらがっている状態であることのほうが多く、まずそのぶどうの房をバラけるようにほどいてあげるわけです。きちんと整理して、残すべき房を明確にしてあげるわけです。この際に乱暴に扱うとぶどうが傷んでしまうので、丁寧に大切に1房ずつ全ての房をほどいてあげるのですが、根気が必要とされます。
そして、1本の枝に1房を残して、それ以外のぶどうの房を切っていくわけですが、基本的には幹に一番近いところの房を残します。状態によっては一番近いところの房よりも2番目がいいと判断した場合には1番目の房を切ることもあり、ぶどうの樹1本1本の状態は異なりますので機械的にできる作業ではありません。そして、ぶどうの房のまわりの風通しがよくなるように、下の邪魔な葉もむしりとってあげます。
こうして1本1本のぶどうの樹のお世話をしてあげるのですが、登美の丘ワイナリーのスタッフが全て手作業で行ないます。
摘房作業を終えた後の状態を見ると、非常にスッキリとした印象を受け、ぶどう達が喜んでいるかのように思えます。
一方で、切り落とされたぶどうの房は、そのまま畑の土に戻ります。
残す房よりも切る房のほうが多いわけですから、「もったいないじゃないの」とよく言われますが、熟す前のぶどうは「酸っぱい」し「エグイ」のです。春先ご好評だった「ぶどうの芽のてんぷら」のような美味しいご提案ができないか引き続き考え続けたいとは思っています。
現在、登美の丘ワイナリーの栽培グループのスタッフは、朝の5時からのシフト勤務で作業を行なっています。炎天下のぶどう畑での作業は熱中症のリスクが高いためで、気温の上がる前の早朝から仕事に取り掛かります。そして、太陽の位置と陰を確認して、なるべく陰のサイドに入ってぶどうのお世話をしてあげます。また、ぶどうの房の位置が低いのでどうしてもかがむ姿勢の作業が多くなると腰に負担がかかるので、登美の丘ワイナリーではバスケットボールを腰につけてイスにするという工夫をしています。これは「おっ玉げた」といって作業スタッフからのアイデアでつくったものですが、登美の丘ワイナリー以外でやってるところは知る限りありません。
登美の丘ワイナリーでは、ぶどうのお世話をする側のスタッフの健康状態にも気遣いながら、高品質なぶどうづくり・ワインづくりに取り組んでいます。
ただ、まだまだ摘房作業は始まったばかりです。