今年の登美の丘ワイナリーの梅雨は、しっかり「梅雨」だと認識できるくらい雨の日が続いています。
ぶどうの生育期に雨の多い日本でのワインづくりにとって、雨に対する対策をどのようにするかということは非常に重要です。登美の丘ワイナリーは、標高400mから600mの丘陵地に位置するため、全てのぶどう畑は傾斜しています。その傾斜に沿った形で、降った雨がすみやかにぶどう畑から排出されるように様々な工夫をしています。
ひとつは、「明渠(めいきょ)」。上部を開けた形状の排水溝のことです。ぶどう畑の周囲やあるところでは横断するように、降った雨水を排水する溝を切っています。よりスピーディに地表の表層の水を排出します。
もうひとつは、しみこんだ地中の水を排水するための「暗渠(あんきょ)」。「明渠」と違って「暗渠」とは地中に埋めた排水設備のことを指します。登美の丘ワイナリーでは、ぶどう畑の地中に穴の空いたプラスチック製パイプを埋めて排水を促進しています。プラスティック製の直径10cmくらいでスリット状の穴が等間隔に何箇所も開いていてる管を、粘土層のある地表から1m70cmまでの深さに、(ぶどう畑のそれぞれの区画によって異なりますが)10mから50mくらいの間隔で埋設して地中の水を集めてぶどう畑の外に流すようにしています。
雨が上がった後でもこの配管によって地中から集められた水が排出されている様子がよく分かります。
ぶどう樹の畝の切り方にも工夫をしています。表層の雨水も速やかに排出することができるように、ぶどう樹の畝の切り方を尾根から谷に向かって下るようにと、近年変えてきています。
栽培作業をする人間にとっては畝の間を往復するわけですから、傾斜の地形を同じ高さの段々にしたほうが作業負担は楽ですが、段々にすると排水がスムーズにいかない傾向があるため、傾斜に沿って畝を作るのです。その傾斜のある畝間を移動するのですから当然上り下りの繰り返しになるのでそれだけでもたいへんですが、なによりもぶどうの品質が優先です。
水分の少ない構造を物理的に作り出すために「高畝式栽培」という方法で、栽培管理をしている区画もあります。わざと地表より高く畝を盛り、そこに植えることにより、水分の少ない畝の中でぶどう樹は根を張ることになります。登美の丘ワイナリーでは、いろいろな取り組みを行ない、それぞれを評価・検証しながら、ワインの品質向上を目指しているのです。
また、登美の丘ワイナリーでは「草生栽培」といって、ぶどうの畝の間に、この登美の丘で自然に生えてくる植物たちと共生させています。この植物たちは、表土を守り、土を耕すという役割とともに、この植物たちがぶどうと競合して、降った雨水を吸って蒸散してくれるという役割も果たしてくれているのです。
自然に逆らわず、自然と共生して登美の丘ワイナリーでは、ぶどうづくりに取り組んでいます。
ぜひ、ぶどう畑をご覧になる際にも、そんなことを思い出していただければと思います。
そして、そのようにいろいろな取り組みによって収穫したぶどうを仕込んだ登美の丘ワイナリーのワインのひとつひとつをご賞味いただければ幸いです。