先日、アメリカのニューヨーク州にあるコーネル大学のテリー・アクリー教授がご来場されました。教授は、味や香り・風味が人(脳)に認知される仕組みの研究などで知られる食品研究のスペシャリスト。
渡辺所長の案内で「眺望台」から、広大な自家ぶどう園をご覧になりながら、登美の丘ワイナリーでの草生栽培の説明に非常に興味を寄せられました。「カリフォルニアでも、ぶどう畑の畝の間を耕し、種を植えて雑草を生やし刈り込んで肥料にしています」という教授の話に、「登美の丘ワイナリーでは耕すことはせず、特定の種も撒くこともなく、あくまでこの登美の丘の自然の環境の中でぶどうを育てています」と解説する渡辺所長の話を熱心に聞いておられました。
また、ぶどう樹を雨から守るトンネルについても興味を持たれて「これを人の手での設置ではなく、機械化して人の労働力を機械に置き換える日も来るのではないか」とのコメントも。場内の甲州種ぶどうの畑でも棚仕立てのぶどう栽培に目を輝かせて熱心に質問し渡辺所長の話を聞いておられました。麓エリアの樽熟庫でも、渡辺所長から新樽比率を下げたり、樽熟期間を短めに変更してきているワインつくりの話にも大きくうなずいておられました。
最も興味をもたれていたテイスティングでは、ジャパンプレミアム甲州2013について、「ピュアでクリーンな味わいですね、突出する個性がないのがこの品種の個性だと思う。バランスはパーフェクト。軽快な味わいの中に、ワインづくりの基盤がしっかりとしていてミスのないワインづくりをしているのがわかる。すばらしい。特に何度飲んでも美味しい」とのコメント。
登美の丘甲州2013については、「樽熟しているようだがオーク樽の強い風味が主張することなく味わいがある。これは新樽ではなく古樽を選択していることでこの品種の果実味に複雑味をうまく与えていると思われます。ワインのつくり手の狙いがうまく成功しているのでしょう」と。
登美(白)2012についても「非常にすばらしい。どんな酵母を使っているんですか?」と非常に興味津々で、ワインづくりの深い質問を渡辺所長に投げかけられていました。
続いて、赤ワインについて、ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA2012と塩尻マスカット・ベーリーA2013の比較テイスティングでは、まず「マスカット・ベーリーAという品種を私は飲んだことがない」ということで、渡辺所長からマスカット・ベーリーAがベーリーとマスカット・ハンブルグを交雑した日本オリジナルのハイブリッド品種で、1927年に新潟の川上善兵衛という登美の丘にゆかりの深い日本人が開発した事をご説明。
教授は、「特に塩尻マスカット・ベーリーAの味わいに、果実味の中にペッパーの印象を感じます。樽のニュアンスが味わいを引き締めて非常に成功していると思います。ふたつとも非常にやさしく醸しているのがよくわかります。これでマスカット・ベーリーAが何かがよくわかりました。」とのコメント。
さらに、「どうしてサントリーはこの品種を選択したのですか?」というアクリー教授の質問に「サントリーは80年代から多くの契約栽培を各地で展開していました。
特に塩尻地区はマスカット・ベーリーAに適すると考えて栽培してもらっています。それと、サントリーにゆかりの深い川上善兵衛さんが作った品種ということもあり、非常にこの品種に思い入れがあるのも事実です」と応える渡辺所長。アクリー教授からは「非常にいいチョイスだと思います。多くのお客様のいるマーケットに適合していると思います」
登美(赤)2009については、「これはサントリーのメリタージュワイン(カリフォルニアでのボルドーブレンドの高級ワイン)ですね」とのこと。また「プティヴェルドをブレンドしているのは色調のためだけでないとのことですが、赤い果実や黒い果実の味わいがしっかり表現されています」そして、ゆっくりと「エクセレント!」というコメント。
最後にアクリー教授から「私は32年前にこのワイナリーに来たことがありましたが、本日再び見せてもらって、非常に大きな発展を遂げているのがよくわかりました。品質を重視して、その品質を作り込むことができるぶどうづくり・ワインづくりの技術がしっかりとあるすばらしいワイナリーに発展していると思いました。」「またお会いしましょう!」と渡辺所長と固い握手をして、アクリー教授は非常ににこやかに登美の丘ワイナリーを出発されました。
「世界を感動させる日本ワインを」という登美の丘ワイナリーの標榜する基本理念をアクリー教授に感じていただけたかと思いますが、より高品質なワインづくりに真摯に取り組んでいきたいと考えます。