一昨年、この連載でシカゴのことを語ろうと思っていたら、野球のメジャー(MLB)でシカゴ・カブスがワールドチャンピオンになった。
そしてペンシルベニア州やフィラデルフィアについて語っているいま、2月4日に開催されたアメリカンフットボール(NFL)第52回スーパーボウルにおいてフィラデルフィア・イーグルスが勝利した。とても愉快な気分だ。
フィラデルフィアという街を、映画で知っているという方も多いのではないだろうか。わたしはやはり『ロッキー』(1976)。フィラデルフィア美術館正面の階段をシルヴェスター・スタローンがトレーニングで駆け上がるシーンがある。あの階段は“ロッキー・ステップ”と呼ばれ、観光名所になっている。もうひとつトム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』(1993)も記憶にある。
フィラデルフィアが舞台ではないが、ペンシルベニア州のアーミッシュの姿を描いたハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック 目撃者』も印象深い。
ペンシルベニアと日本の関わりは古く長い。ゆったりとクラフトバーボンを飲みながらお読みいただきたい。おすすめは「ノブクリーク シングルバレル」。9年超貯蔵の熟成樽のなかから選び抜いた1樽の究極の香味。オークの香ばしさ、キャラメルのような甘みがある濃厚でリッチな長い余韻を、これからお話する長い歴史とともに味わっていただきたい。
日本との関わりというには飛躍しすぎてはいるが、まず1853年、徳川幕府が大慌てとなった黒船来航。ペリー提督の旗艦サスケハナ号は1850年にフィラデルフィア海軍工廠(こうしょう)で建造されたものだ。
サスケハナとは川の名。アメリカ東海岸側では全長約715kmと最も長い川で、ニューヨーク、ペンシルベニア、メリーランドと3州に渡る。最後はワシントンD.C.東のチェサピーク湾に流れ込む。
ペリー提督が指揮したアメリカ合衆国東印度艦隊は、ヨーロッパ列強国が半植民地化を画策していた最中の清(中国)に到着。その後、上海を出港して琉球王国(沖縄)に寄港した。黒船来航騒ぎの前年、1852年のことである。
このとき琉球王国の執政や高官をペリー提督はサスケハナ号の晩餐に招待する。この席で料理とともにふるまったのはワインやジンとともにスコッチとアメリカンウイスキーだった。