9月のオルガン プロムナード コンサートではJ. S. バッハ(1685~1750)とリスト(1811~86)のオルガン音楽をお届けいたします。 『幻想曲とフーガ ト短調』 BWV 542は、J. S. バッハがワイマール宮廷のオルガニストを務めていた時代に作曲されたと考えられています。即興的でドラマティックな部分と対位法的な部分から成る幻想曲、オランダ民謡からとった主題を展開させていくフーガは、北ドイツのオルガン音楽からの影響を受けており、若きバッハの情熱溢れた作品です。 “ピアノの魔術師”と呼ばれ、演奏旅行でヨーロッパ中を旅していたリストですが、1848年にワイマールに定住し、作曲家・教育者として活動するようになります。1855年、ワイマール近郊の町メルゼブルクの大聖堂のオルガン奉献式のために依頼を受けたことをきっかけに、リストは『バッハの名による前奏曲とフーガ』の作曲に取り組みました。この作品はBACH主題(シ♭-ラ-ド-シ) を扱い、またフーガも取り入れられていることからJ. S. バッハへのオマージュであることは明らかですが、半音階的書法がもたらす響きの複雑さや、超絶技巧による華やかさはリストならではの音楽です。 音楽の父として名をはせるJ. S. バッハ、そして彼を尊敬してやまなかったリスト、二人の巨匠がワイマールという地で作曲した2つの作品をお楽しみください。 (木村理佐)