とっておき アフタヌーン Vol.7

指揮者・鈴木優人インタビュー

サントリーホールと日本フィルハーモニー交響楽団が平日のマチネでお届けするシリーズ「日本フィル&サントリーホール とっておき アフタヌーン」。2018シーズン初回の5月2日公演に登場する鈴木優人(まさと)さんにお話を伺いました。


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以前、オルガン奏者としてお話を伺ったときには、オルガンの魅力は大きなものを動かす醍醐味、オーケストラを指揮するような楽しさだとおっしゃっていました。では、指揮をする楽しみとは?

同じように、指揮者にはオルガンを弾くような楽しみがある、と言ってもいいかもしれませんね。オルガンのパイプ1本1本が個性と強い意志を持っているという感じです。オーケストラというのは百人でひとつの音楽をする、ある種の集団活動です。でも全体主義ということではなく、ひとりひとりが音楽に対しての思いや解釈をもってくるわけで、それをひとつの流れにしていくのが指揮者の仕事です。
ぼくはチェンバロの調律とかピアノの調弦がとても好きなんです。音程を整えるだけではなく、ひとつひとつの音の響きを吟味していくような、ちょっと瞑想的な作業です。調律と演奏というのは同時には行えない。まず調律して音を整えて、そのあとに演奏するのです。でもオーケストラというのは、ずっと調律しながら演奏しているようなものなので、そういう作業がぼくの中で融合して、より愉しいのです。非常にライブな作業。同じ曲をやっても1回1回違いますし、起こるハプニングも毎回違う、それが楽しい。もちろん楽しいだけじゃないですけれど(笑)、でも、振り返ればすべて楽しいです。

日本フィルとの共演は?

  • 堀田力丸

    ©堀田力丸

実は初めてなんです。今回初めて指揮台にあがらせていただき、しかもこのように非常に古典的な作品でご一緒できるので、とても楽しみです。
ソリスト(チェロ)の宮田大さんとは、チェンバロ奏者として共演したことがあります。バロック音楽を一緒に。
バリトン&ナビゲーターの加耒くんは、BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のメンバーでよく知っているので、息のあった進行でお届けできると思います。

とっておきアフタヌーン2018シーズンは、指揮者もソリストも“イケメン揃い”と聞いています。

う~ん、たしかに、他の方々は皆さん……そうですね。加耒くんなんかまさに。加耒スマイルというのがあって、よくみんなで真似しているんです(笑)

  • 鈴木優人(指揮)
    ©Marco Borggreve

  • 宮田大(チェロ)
    ©Daisuke Omori

  • 加耒徹
    (バリトン&ナビゲーター)

プログラムの聴きどころは?

チャイコフスキーの協奏曲『ロココの主題による変奏曲』は、チェリストの技術、まさに宮田大さんの超絶技巧が余すところなく出される作品です。この作品は初めて指揮するのですが、宮田さんとこういう共演をしたいとずっと思っていたので、光栄ですし、とても楽しみです。
ヘンデルの組曲『水上の音楽』は、私がやっている早朝のラジオ番組(NHK-FM「古楽の楽しみ」)のテーマ音楽なんです。有名な第2組曲第2曲「アラ・ホーンパイプ」は、日本フィルの金管楽器と、オーボエ、ファゴットのリードセクション、そして弦楽器のアンサンブルの魅力をたっぷりお楽しみいただけると思います。弦のアンサンブルも非常に小編成で、みんなで立って演奏しますので、普段のオーケストラのイメージとはだいぶ違うと思います。
ベートーヴェンの交響曲第7番は、オーボエのソロで始まる、非常に明るいイタリアのような作品です。第2楽章は非常に有名な楽章で、葬送行進曲のような憂いがあって、それがひとつの魅力です。日本人の好きな侘び寂びの感覚にばっちりくる曲だと思います。3楽章は元気があって、4楽章は台風のような、でもすごくポジティブな嵐というか疾風怒濤という感じ。ヘンデル的な部分もあります。音形が波風を表現しているように、ぐるぐる回るんです。ずっとめまぐるしい感じで、あれよあれよと進んでいきます。
シンフォニー(交響曲)という意味では9番に近づいて、非常に円熟している。私は本当に大好きな曲のひとつです。9番もとても良い曲ですけれど、7番のような健康的な明るさがあるのはとても貴重ではないかと思います。8番も明るいけれどちょっと軽めなので、それに対して7番はしっかり重さと中身を感じつつ、しかも明るくて楽しい。アフタヌーンコンサートにはぴったりだと思います。

  • ©team Miura

ヘンデル、チャイコフスキー、ベートーヴェンと、クラシックの基本をおさえた感じですね。そして、「とっておきアフタヌーン」3公演すべてを通して聴くと、なんとなくクラシック音楽の入口の全部を聴いた気になれそうです。

まさにその通りですね。川瀬さんのプログラムを聴いたらロシア全部聴いたって感じになるんじゃないかな。角田さんのプログラムは名曲コンサート。とくにラフマニノフの交響曲2番の3楽章(超名曲です!)だけやるなんて、ずるいな~、おいしいとこどりだな~(笑)

鈴木さんがトップバッターです。

2018シーズンのオープニングということで責任重大ですから、しっかり華やかに幕が開けられるようにしたいと思います。ゴールデンウィークの幕開けでもありますし。とても楽しみです。

昼間のコンサート(マチネ)ならではの魅力は?

お客様は、気軽な感じでいらっしゃれますよね。夜のコンサートとなるとその日1日をそのために過ごすという感じですが、昼のコンサートは切り札のひとつというか、今日はコンサート聴いてあれしてこれしてみたいな軽さがあります。とは言え、サントリーホールという音響的にも場所的にも音楽に集中できる環境ですので、本格的な演奏を楽しんでいただけると思います。
お昼の愉しい時間の過ごし方として、コンサートにちょっと行くというのは素敵なことだと思いますので、ぜひ気軽に来ていただけたら。時間がなくて全部聴けないという方は前半だけでもいいですし、気持ちよく寝てもらってもいいし。それに、このあたりは周りも楽しいし、季節もいいし。託児サービスもありますしね。たぶん僕も使わせてもらいますよ。 ご本人次第、好きな演奏会の楽しみ方で、ご来場をお待ちしております。

鍵盤奏者・作曲・演出・企画プロデュースなど、サントリーホールの公演にこれまでたびたびご出演いただいている鈴木優人さん、今度は指揮者として5月の公演を楽しみにしています。ありがとうございました。

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