『Hibiki』Vol.12 2020年7月1日発行
特集:音楽を届ける仕事
サントリーホールから音楽が消えてしまった数カ月間。
「人がいてこそのコンサートホール」という当たり前のことを、誰もが強く感じていました。
ステージ上の演奏家と、その音楽を受けとめる客席のひとりひとり。
その周りに多くの人々が関わって、コンサートという場がつくり出されます。
今号では、演奏家とお客様とホールを繋ぐ仕事人たちの声をお届けします。
「生きている」と感じる場所
サントリーホール館長 堤 剛
©Naruyasu Nabeshima
「音楽は、人と人とのコミュニケーションそのものです。言葉を超え、国を越え、人種や民族を超えて、語り合い、喜び合い、悲しみ合う。心の琴線に触れるような『時』と『空間』を共有し、人々が互いに響き合うのが音楽です」
と語る、サントリーホール館長・堤剛。8歳の頃からステージに立ち、70年以上も世界各地を飛び回って演奏活動を続けているチェリストです。コンサートという場を失った日々は「冬眠生活に入ったようで大変辛く、心も不安定で厳しい時間」だったと言います。
「私たち以上に、音楽無しでは生きていけないという音楽ファンの方々のお気持ちは、察するに余りあります。音楽は、人の心にとって本当に大きく大事な糧。ですから、どんな状況でも音楽というものが生きていて、それを伝え続けること、音楽活動をずっと続けていくことが大切と考え、サントリーホールからも様々な情報発信、ライブ配信を行っています。しかし、やはり我々にとってはお客様がいらっしゃるということが根源的に大事なことなのです。演奏家も、音を発信して、それをどういう風に反応していただけたかによって初めて、創造活動として成り立つわけですから」
そして、こう続けます。
「ひとつのコンサートホールが活動していくためには、実に多くの方々の努力と支えが必要です。演奏者を含めた総合的な力が発揮されるのが、コンサートホールたる由縁だと思っています。サントリーホールには、スタッフだけでも延べ300名以上が関わっています。そのひとりひとりの心意気は、国内外からいらっしゃる演奏家にもすぐに感じとっていただけるようです。楽屋口から一歩踏み入れた途端、『今日はなにか自分の演奏家人生のなかでも、プラスアルファのものができる気がする』とか、『チリひとつ落ちていない楽屋で音楽することだけに集中できるのは無上の喜び』、などと言っていただけるのは、とても嬉しいことです」
コンサートホールとは、心が高揚し、生きていることに対する内面の動きを感じられる場所。人々が人生を楽しむダイナミズムを感じられる場所。そして、同時代の新しい音楽が生まれ、将来への希望をシェアする場でもあると、堤は言います。
「皆様のおかげで、ホールが生きた存在になるのです」
素晴らしい舞台を
コンサートを支える仕事人、
まずはステージサイドからご紹介していきます。
ステージ・マネージャー
今村和弘
ステージ・マネージャー
コンサートという「扇」のかなめといえる役割を担っているのが、ステージ・マネージャーです。
「ひとことで言えば、現場監督ですね。コンサートの主催者と演奏者の両方をケアして、コンサートが無事行われるようにする仕事です」とサントリーホール ステージ・マネージャーの今村和弘は言います。
コンサートの開催が決まったときから、その仕事は始まります。演奏者の個性、陣容、要望、また必要とされる舞台のセッティングやオペレーション、すべてを把握します。そしてコンサートの舞台と環境をつくる関係者全員と打ち合わせを重ねながら、当日を迎えます。
「最後の打ち合わせは、開場の一時間前。今日のコンサートの状況をシミュレーションして行います」
いざコンサートが始まると、今村は舞台に出ていく演奏者を舞台下手で見送り、コンサートの間中、そこから舞台と客席に注意を払っています。開始から終了を、状況を見ながら指示するのもその役割。演奏者だけでなく、客席の状況や空気を読むことも必要です。
ステージ・マネージャーはこの道一筋というキャリアを積む人が多い仕事。今村も東京交響楽団のステージ・マネージャーを25年にわたってつとめてきました。しかし、楽団とコンサートホールのステージ・マネージャーでは、その仕事がかなり違うそうです。
「楽団ではメンバーのことを始め、楽団のすべてを知っていることが重要でした。コンサートホールは逆に毎日演奏者が変わります。それもオーケストラ、室内楽、リサイタルなど形態も違うので、必要とされることも変化し、緊張感が高いですね」
それだけに「何事もなくコンサートが終わったときに、いちばん手ごたえを感じます」と。
「演奏者や主催者をケアする仕事ですが、目的の最終地点はお客様です。この日、この時のコンサートを、お客様にそのまま感じていただきたいと思っています。そのために、その日なりのベストを演出できるよう心掛けています」
大ホールで開催される演奏会は年間約350公演にもなり(昨年の場合)、今村はそのすべてに関わります。演奏会が行われている間、客席からは見えませんが、舞台に向かって左手の舞台袖には常に今村が佇み、耳と目を凝らしてコンサートを見守っているのです。
舞台技術
舞台を技術で支える。
右から
畠中陵(舞台)、
中島智一(照明)、
鎌田努(チーフディレクター)、
宇野善文(音響)
コンサートによって異なる舞台や装置、音響、照明といったことを総合的に手掛けているスペシャリストが、サントリーホールには常駐しています。
「サントリーホールのオープン以来、コンサートの技術部門を担っています」と語るのは、チーフディレクターとして専門家集団を総括する鎌田努。自身もサントリーホールに赴任して今年ですでに20年を数えます。
「クラシック音楽のコンサートホールで必要とされるのは、演奏家の方々がいかに音楽に集中できて、ベストな環境でいい演奏を届けるか、ということ。演劇やドラマのセットなどとはまったく違いますね」
また、「サマーフェスティバル」など現代音楽の演奏会では、それまでない舞台装置や演出を求められることも多く、サントリーホールのルールのなかでどう実現していくかという挑戦もあります。
では、舞台・音響・照明、それぞれどんな技に支えられているのでしょうか。
舞台
舞台のチーフは畠中陵。
「サントリーホールのステージは39の迫(せり)に分かれていて、電動で動くという点が特徴です。さらに必要に応じて台を追加したり、スペースを追加します。事前の打ち合わせで出演者のニーズに応えるようセッティングします。けれども、公演直前のリハーサルになって、演奏者が直接声をかけてきて、『もう少しこういう位置にできないか』など要望を伝えてくることも多いので、その場で調整することも多々あり、これは出演者とスタッフの距離が近いサントリーホールならでは、だと思います」
一度サントリーホールに来た演奏者については、楽器の置き位置や立ち位置の好みなどはすべてノートに記録し、担当者が変わっても引き継がれます。
「演奏家の方に『サントリーホールの舞台では安心して演奏に集中できる』と感じていただければ、と思っています」
39の迫をコントロール。
照明
「照明の役割はふたつあります。ひとつは演奏者がきれいに見えるように光を当てること。もうひとつは譜面が見やすく、まぶしくなく、演奏者のストレスにならない光の調整です」
と語るのは照明担当の中島智一。
実はこのふたつの要素、常にせめぎ合いだそうです。両方の効果を最大にするために工夫を凝らします。とくに、ピアニストやヴァイオリニストのリサイタルは人によって感じ方も違いも大きく、難しいそう。
「かつて演劇の舞台照明をやっているときは、照明による演出が優先でした。今もオペラなどでそういう要素はありますが、『演奏者のストレスにならない』ことが最優先というのはクラシックのコンサートホールならではです。照明マンとして意識が変わりました」
音響
オペラなどでは舞台からではなく遠くから歌声が響いてきたり、どこからともなく楽器の音が流れてきたり……。そんな仕掛けのある演目があります。その臨場感の演出に貢献しているのが音響です。
「舞台袖や客席で歌い演奏した音をマイクで拾って会場内のスピーカーから出すのですが、あくまでも客席に直接向いていないスピーカーから音を出すことで、自然な響きをホールに紛れ込ませます。そのほか、現代音楽などの特殊な楽器や木片、水、紙などを楽器としてオーケストラの中で使う場合、音響のバランスをとるためにマイクで拡声することもありますが、スピーカーからではなく楽器から出ているようにセッティングします」
と宇野善文は言います。
一方で、MCが入るコンサートでは言葉の明瞭度を上げるために音質調整します。生音を楽しむサントリーホールだからこそ求められる技術です。
心地よい時間を
本番に向けステージ上で着々と準備が進められ、楽屋で演奏者たちが集中力を高めている頃、
ホワイエ(ロビー)ではお客様をお迎えする体制が万全に整えられています。
レセプショニスト
中村奈津子
レセプショニスト統括マネージャー
来場される皆さんと最初に顔を合わせるのが「レセプショニスト」です。コンサートホールにレセプショニストというサービスを取り入れたのは、サントリーホールが日本で最初でした。
「1986年の開館にあたり、ホールで音楽を聴くだけでなく、カラヤン広場から一歩足を踏み入れた非日常空間で過ごす時間を心から楽しんでもらいたいと、初代館長・佐治敬三の強い想いから生まれた仕事です。エントランスでお迎えし、チケットテイク、クローク、客席へのご案内。お客様がなにかを必要とされた時にすぐにお手伝いができるよう控え、お客様の思い思いにコンサートを楽しんでいただく、それが私たちの役割です」
と話すのは、総勢100名余のレセプショニストを統括するマネージャー、中村奈津子。通常であれば年600近い公演が行われ、大ホールとブルーローズ(小ホール)同時開催も多く、毎回30から40名ほどのレセプショニストが任につきます。
「たとえば19時開演の公演でしたら、昼過ぎにはホールへ。出演者情報、公演内容を確認し、スタッフの配置やローテーションを決めます。主催者、ホール側関係者で最終の打ち合わせ。アナウンス原稿のチェック、扉や座席など設備面も点検、全員で情報を共有し、すべてを整えてお客様をお待ちします」
「レセプショニスト」という名称もここで誕生。稲葉賀恵デザインの清楚な制服。男性スタッフは夜公演では燕尾服を着用。
レセプショニストは、音大生や教師など音楽に携わっているスタッフや、接客が好きでこの職業に就いた人など、様々な経験を持つ多様なメンバーで構成されています。なかにはホールの開館以来ずっと携わっている人も。
サービス介助や上級救命など専門的な知識も身につけ、車椅子の方からお手伝いを必要とされれば座席までご一緒したり、海外からのお客様の応対も多言語対応スタッフによりスムーズに。開演間際に駆け込まれて来る方を、急かさず安全に素早くご案内。クロークは丁寧かつ迅速なチームワークで。混雑する化粧室では声がけをして列を誘導。限られた時間内でもゆったりした気分で過ごしていただけるよう気を配ります。
「大切にしているのは、想像力を働かせることです。お客様は年齢層も幅広く、初めていらっしゃる方もいれば、通い慣れた方もいらっしゃいます。ひとりひとりのご要望やその日のご体調まで想像し、どのようなお声がけや行動が適切か、自らの話し方や立ち居振る舞いが相手にどう届くのか想像すること。人と人とのコミュニケーションですから。一期一会。華やかな雰囲気の場でも親しみやすい存在であることを心掛けます。世界屈指のホールで、お客様のご期待にどうお応えできるか、時代に合ったサービスをしていけるか。使命感のようなものを感じます」
ウイルスなど新たな不安を抱えた世の中で、いかに安心して豊かな心持ちで非日常空間を楽しんでいただけるか、レセプショニストの模索が続きます。
クロークでは、お客様の大事な荷物やコート類を丁寧に無駄なく収納し、迅速にお渡しするシステムを構築しています。
※現在、クロークのご利用は休止しています。
ドリンクコーナー「インテルメッツオ」
中村伊之
インテルメッツオ店長
音楽に包まれる心地よい時間、高まる気分とともにシュワッと喉を潤したり、コーヒー片手に音色を反芻したくなります。1階ホワイエ奥に2カ所、2階に1カ所ある「インテルメッツオ」では、ソフトドリンク各種はもちろん、コンサートホールでお酒を楽しむというスタイルを、開館以来提供し続けています。これも日本初。
「とくに夏は、冷えたビールと白ワインがよく出ますね。『響』や『山崎』など、ウイスキーを飲むのを楽しみにいらっしゃるという方も。ほんの15分ほどの休憩時間内に、できるだけ早く、温かさや冷たさなど飲みやすい温度で提供できるよう努めています。音楽を楽しみに来られている方々の邪魔をしないよう、非日常を楽しむお手伝いをさせていただく仕事だと思っています」
と店長の中村伊之。前職はホテルマンだったそうです。
「実は私、ここに来て初めてオーケストラの音楽を聴いたんです。演奏曲によっては休憩が入らないことや、あとどのぐらいで休憩になってお客様が出ていらっしゃるのか、最初は予測できなくて。でも50人いるスタッフの大半は音大生やクラシック音楽を熟知しているベテランなので、助けてもらっています。私も今では好きな交響曲がいくつかできました」
定期演奏会の会員の方など、顔なじみのお客様も少なくないそうです。
「カウンターで『いつものね』なんてご注文をされる方も。コロナ禍でこの数カ月営業できていないので、あのお客様はどうされているかな、楽団員の方たちはどう過ごしているのかな、などと考えながら、再開に向け新たなサービス形態を思案しています」
営業は通常、コンサート開演30分前から休憩時間終了まで。メニューにはサンドウィッチやプティ・フールなども。
※ドリンクコーナーは営業を停止していましたが、7月15日からソフトドリンクのみ販売を再開しました。
心おきなく音楽に酔える空間を
清潔さ、安全さ、快適さ。そうした環境が揃ってこそ、音楽に心ゆくまで浸り、酔うことができます。
そのための工夫と努力がそこにはありました。
警備
綿谷和人
警備隊長
出演者にもお客様にも、コンサートの場すべてに目を配っているのが、サントリーホール警備隊です。どんなに著名な指揮者も演奏家も、サントリーホールとのファーストコンタクトは、楽屋口受付にいる警備員なのです。
「毎日違う顔ぶれの大勢の音楽家が出入りされるので、着任してすぐは、とくにマエストロとソリストのお顔を覚えるのが大変でした。柔道人生だった自分には、これまで音楽の世界に触れる機会がまったくなかったので」
と、がっしりした体格に優しい表情で話すのは、警備隊長の綿谷和人。
「警備員は『笑顔を見せるな』と教育されるのですが、サントリーホールでは事情が違います。丁寧な言葉遣いと笑顔を心掛けています」
常時くまなく館内をモニターで監視、巡回。コンサートのある日は開場前からエントランスに立ち、終演まで館内外の警戒にあたります。レセプショニストや各スタッフと連携し、人の動きや流れを見て全体を把握、わずかな異常も敏感に察知します。なにかトラブルがあれば駆けつけ、安全を保ってくれる、頼もしい存在です。
「お客様の表情が、いらした時と帰る時では全然違うんです。ほわーんと緩んだ、なんとも良い空気になります」
保守点検
馬場照夫 飯干裕樹 荻野准一
保守点検
サントリーホールの中央監視室で保守点検に従事する馬場、飯干、荻野。防犯モニターの監視、給水や空調も業務に含まれ、コロナ禍での休館中も毎日24時間、サントリーホールを守っていました。
「いつでも再開できるように、どこも不具合がないよう点検、保守していました」
と馬場照夫。点検は早朝から始まり、公演の2時間前、公演後にも、空調や熱源の操作などを行っています。
とくに調整が難しいのは空調。
「季節、その日の天気、入場者数などによって、お客様が快適と感じられる温度が違うのです。また、開場時に比べて、開演前には1.5度か2度も、温度は上がってしまいます」
と飯干裕樹。お客様がリラックスして音楽に聴きいっていただくために温度管理は必須です。
すでにサントリーホールで6年間保守点検を手掛ける荻野准一は「コンサートホールで独特なのは、演奏者にとっての快適温度への配慮です。北ヨーロッパからいらっしゃる演奏家の方からは『もっと温度を下げてほしい』とよく希望があります。楽器のコンディションのためには0.1度単位での温度調整や湿度調整も必要です。ステージ・マネージャーや表方※と常に連携しています」
※舞台を境に、客席側を「表」、楽屋側を「裏」と呼び、「表方」は受付、チケット、誘導など来場されたお客様と直に接する仕事。
清掃
米原忍 国分さち子
クリーンスタッフ
心おきなく音楽に浸り、贅沢な気分を味わうには、クリーンで安心できる空間であることが必要です。
サントリーホールの清掃を一手に引き受けているのが総勢20名のスタッフです。公演のある日は早朝から終演までの約16時間にわたって、シフトを組んでサントリーホールの清潔を守ります。
米原忍は初のサントリーホール女性所長。
「サントリーホールならではの清掃があります。それは“目立て”とよばれる絨毯の掃除。特殊なブラシで絨毯の毛を立てて、中に入り込んだ埃まで掻き出してきれいにするとともに、絨毯についた足跡もきれいに消します。それは公演ごとに行われるので、昼公演があっても夜公演の前には足跡のない絨毯になります」
5年間日々従事してきた国分さち子は
「いちばん気を使うのは女性の化粧室です。公演のある日は、開演前、休憩を挟んだ前後の演奏中、終演後と4回にわたって掃除しますが、休憩までの演奏が短い場合は、あせりますね」
と微笑みます。お客様と顔を合わせることは普段ありませんが、演奏者から「きれいな楽屋で嬉しい」と言われることもしばしば。
「お客様に安心してご来場いただけるよう、今後はより一層、消毒や清掃作業にも細心の注意が必要ですね」
サントリーホール企画制作部長
河野彰子
「音楽を分かちあえる時」に向かって
最後に、コンサートの”仕掛け人”プロデューサーの想いをお届けします。
なにも無いところから企画を立ち上げ、本番に至るまで、本当にいろいろな人の力によってコンサートはつくりあげられます。そのすべてに一貫して関わり、司令塔として見守り、フォローするのが私たちのミッションです。船長のような役割でしょうか。
公演によりケースバイケースですが、毎夏恒例の現代音楽の祭典「サマーフェスティバル」の場合、作曲家に曲を委嘱するところから始まるので、3年以上前から動いています。コンセプト、日時や場所など枠組みを決め、演奏者に依頼、スケジュール調整。コンサートの魅力をどのように発信していくか広報宣伝活動を計画し、半年ほど前からチケットを売り出し、当日に向け舞台づくり。現場のスタッフ、各専門家、アーティストを蜘蛛の巣のようにつなぎ、大きな獲物を捉え、その瞬間にいかにベストの状態でお客様に届けられるか。
コンサートの成功には、お客様の力が絶対に必要なのです。そして、お客様が気持ちよく聴ける環境を整えてくれるスタッフの存在も。
ウィズコロナでの新しい形を模索しながら、お客様と共に安全安心に音楽を生で分かちあえるよう、スタッフ一同取り組んでいきます。
「音楽を分かちあえる時」に向かって
最後に、コンサートの”仕掛け人”プロデューサーの想いをお届けします。
サントリーホール企画制作部長
河野彰子
なにも無いところから企画を立ち上げ、本番に至るまで、本当にいろいろな人の力によってコンサートはつくりあげられます。そのすべてに一貫して関わり、司令塔として見守り、フォローするのが私たちのミッションです。船長のような役割でしょうか。
公演によりケースバイケースですが、毎夏恒例の現代音楽の祭典「サマーフェスティバル」の場合、作曲家に曲を委嘱するところから始まるので、3年以上前から動いています。コンセプト、日時や場所など枠組みを決め、演奏者に依頼、スケジュール調整。コンサートの魅力をどのように発信していくか広報宣伝活動を計画し、半年ほど前からチケットを売り出し、当日に向け舞台づくり。現場のスタッフ、各専門家、アーティストを蜘蛛の巣のようにつなぎ、大きな獲物を捉え、その瞬間にいかにベストの状態でお客様に届けられるか。
コンサートの成功には、お客様の力が絶対に必要なのです。そして、お客様が気持ちよく聴ける環境を整えてくれるスタッフの存在も。
ウィズコロナでの新しい形を模索しながら、お客様と共に安全安心に音楽を生で分かちあえるよう、スタッフ一同取り組んでいきます。
取材協力: ALSOK常駐警備株式会社 ALSOKビルサービス株式会社 株式会社NHKアート
サントリーパブリシティサービス株式会社 株式会社シービーエス 株式会社ダイナック(五十音順)
2007年よりサントリーホール館長。日本を代表するチェリスト。写真は2019年の「チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)」にて、サントリーホール室内楽アカデミー生たちとの共演。CMGでは毎年、チェリスト堤の新しい挑戦が繰り広げられる。
今年11月開催の「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2020」では、日本人初の器楽奏者のソリストとして、巨匠ゲルギエフと共演予定。