サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー(受講生)として出会い、2016年からトリオとしての活動を始めた葵トリオ。2018年、第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝以来、内外で大きな注目を集めています。
CMGでは2027年のベートーヴェン没後200年に向けて、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲を軸に古典から現代までの多彩なプログラムを披露する<7年プロジェクト>に臨んでいます。今年で4年目を迎えるこのプロジェクトについて、また今回の聴きどころや意気込みを3人のメンバー【秋元孝介(ピアノ)、小川響子(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)】に聞きました。ページ下欄では葵トリオの最近の活動を写真とともにご紹介しています。
秋元孝介 (ピアノ)
7年プロジェクトも折り返し地点を迎えました。思えば2020年にベートーヴェン全曲演奏会をCMGで行う予定でしたが、新型コロナの影響であえなく中止に。代替企画として、1年ごとに1曲ずつベートーヴェンを掘り下げるとともに、幅広いレパートリーと組み合わせることで、葵トリオの成長を見守って頂くようなとても素敵な企画が誕生しました。
昨年までの3年間は、ベートーヴェンの作品1の3曲に取り組みましたが、若きベートーヴェンの異常なまでの新しい時代への挑戦意欲を改めて感じる機会となりました。カップリングプログラムも、フランクの作品1-1やラフマニノフの作品9など、若き情熱と意欲に溢れた知られざる作品を演奏してきました。
今年のベートーヴェンは、作品11「街の歌」に取り組みます。明るく瑞々しいこの作品は、僕が室内楽アカデミーの初回で取り組んだ作品でもあります。室内楽のイロハのイを学んだ、とても個人的に思い出深い作品です。そして合わせて演奏するのはフォーレとスメタナという、どちらも「死」を感じさせるプログラムです。死や病と向き合い、そこから生まれる音楽の深さとエネルギー、そして両作曲家の表現方法の違いについて掘り下げることができればと思っています。
ピアノ三重奏の軸とも言えるベートーヴェンと、古今東西の幅広いレパートリーを演奏する7年プロジェクトは、室内楽に特化したCMGだからこそできる企画です。今年もぜひ多くの皆様とピアノ三重奏を共に楽しみたいです!
小川響子 (ヴァイオリン)
初めてCMGに出演させていただいたのは、9年前にサントリーホール室内楽アカデミー・フェロー(受講生)の時でした。幼い頃からの憧れのサントリーホールでの演奏は、嬉しさと同時に緊張に押しつぶされそうになったのを今でも覚えております。特に「フィナーレ」公演での演奏は、室内楽好きの、少しピリついたお客様の雰囲気に少し呑まれそうになりましたが、その客席の緊張感と奏者の緊張感が、室内楽にどっぷり浸かるCMGの空間を作り上げているのだと思いました。
室内楽に没頭できるCMGの空間で毎年演奏させて頂けることは、トリオにとって大きな刺激と成長になっていると感じます。
ベートーヴェンに毎年真摯に向き合う機会は大変貴重ですし、まだあまり日の目を浴びていない作品も取り上げることができ、自分たちの中でもピアノ三重奏のさらなる魅力を、毎年掘り下げることができていると思います。
2024年はベートーヴェンの「街の歌」、アニバーサリーイヤーのフォーレ(没後100年)とスメタナ(生誕200年)を演奏いたします。どの作品も全く違うキャラクターですが、ピアノ三重奏の魅力が存分に発揮される作品です。
また、今年は「CMGフィナーレ 2024」にて現役アカデミー生の方々とマルティヌーのトリプルコンチェルトを共演させて頂くこととなりました。若い優秀な方々とマルティヌーの溌剌とした作品に取り組むことができること、とても楽しみにしております。
伊東 裕 (チェロ)
2020年ベートーヴェン生誕250年の記念年のCMGで葵トリオにベートーヴェンのピアノ三重奏曲全曲演奏会のお話を頂いた時は、とても嬉しく光栄な気持ちでいっぱいでした。CMGでカルテットがベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏するベートーヴェン・サイクルはアカデミー・フェロー の頃から何度も聴きに行っていたので、同様のプロジェクトに参加出来ることが夢のようでした。残念ながら新型コロナの影響で中止となってしまいましたが、2027年の没後200周年に向けて7年間のベートーヴェンを中心に据えた公演を企画してくださり、心から感謝しております。
第1番から順番にその年ごとの記念の作曲家を交えたプログラムをお送りしましたが、作品1の3曲を3年かけてじっくり取り組んだおかげで初期のベートーヴェンの挑戦的な面、革新的なアイディアなどを改めて感じる貴重な経験になりました。CMG2024では第4番「街の歌」を演奏します。作品11も初期の作品ですが、作品1とはまた違った作風で、ベートーヴェンの明るく楽しい部分を存分に味わっていただけると思います。CMG2025以降はいよいよ中期以降の作品です。初期の作品とどう変わってくるのか、葵トリオの成長と共に、是非毎年お越しいただいて会場で体験していただけましたらとても嬉しいです!