アーティスト・インタビュー

チェンバーミュージック・ガーデン
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サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2024
ウェールズ弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル Ⅰ~Ⅵ

ウェールズ弦楽四重奏団 メッセージ
全6公演の選曲と聴きどころ

2022年10月2日「サントリーホールARKクラシックス」より

CMG2024でベートーヴェン・サイクルを演奏するウェールズ弦楽四重奏団に、意気込みやグループのこだわりが表れる選曲についてメッセージをいただきました。
また、ページ下欄にてベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」より第1楽章の演奏動画をご覧いただけます。
4人の精鋭が熱く、クールに、ベートーヴェンの新たな表情を描き出す全6回公演にご期待ください。

2022年10月2日「サントリーホールARKクラシックス」より

日本のみならず世界を代表するコンサートホールであるサントリーホール。その小ホールにあたるブルーローズでベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏させて頂くという事は、世界中のカルテットにとって、大変名誉なことであります。
そして2024年、幸せなことに、私たちウェールズ弦楽四重奏団がその名誉にあずかりました。24年に結成18年目を迎える私たちにとって、このサントリーホールでの公演が、大分iichiko文化センター音の泉ホール、東京の第一生命ホールに続き、三度目のベートーヴェン全曲演奏となります。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、カルテットにとって“バイブル”とも言われますし、同時に、エベレストのような最も厳しい頂とも言える最重要レパートリーです。
今回は各公演を下記のような意図で選曲いたしました。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲
作品18-2, 18-5, 127
  【6月8日(土) 公演Ⅰ 】
東京クヮルテットの講習会を受講するべく、ウェールズ弦楽四重奏団が結成された2006年に初めて取り組んだ作品127。留学中にライナー・シュミット教授(ハーゲン・クァルテット)のもとで徹底的に学んだ作品18-2。帰国後に初めて一から自分達だけで取り組んだ作品18-5。ウェールズ弦楽四重奏団にとって大切な三作品を集めたプログラムです。

作品59-3, 132  【6月9日(日) 公演Ⅱ 】
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で最もポジティブな外へのエネルギーを放つ作品59-3。第3楽章の“神への感謝の歌”をはじめ、内なる声を届ける作品132。どちらも第1楽章に深長な序奏を持ちます。ハ長調とイ短調、平行調によるプログラムです。

作品18-4, 74, 59-1  【6月11日(火) 公演Ⅲ 】
ベートーヴェンの重要なパトロン二人に焦点を当てたプログラムです。前半はロプコヴィッツ侯爵に献呈された作品から平行調であるハ短調と変ホ長調で書かれた二曲を。後半はラズモフスキー伯爵に献呈された三曲セットから第1番ヘ長調を取り上げます。ベートーヴェンにとって二人がいかに重要だったかは、弦楽四重奏のみならず、交響曲を見ても明らかです。《英雄》はロプコヴィッツ侯爵に、《運命》と《田園》は両者に献呈されています。有名な交響曲三曲と、今回取り上げる三作品は、それぞれが同じ調性で書かれていることも一つのポイントです。

ウェールズ弦楽四重奏団         ©Satoshi Oono
2006年に結成。08年ARDミュンヘン国際音楽コンクール第3位。09年王子ホールにて正式なデビュー。青山音楽賞バロックザール賞を受賞。11年バーゼル・オーケストラ協会(BOG)コンクールにてエクゼコー賞を受賞、第7回大阪国際室内楽コンクール第3位入賞。12年バーゼル音楽院を修了し、13年より日本を拠点に活動。iichiko総合文化センター(大分)や第一生命ホールで、ベートーヴェン全曲演奏会を行った。これまでにプレスラー、小林道夫、ストルツマン、メイエ、ロマノフスキーをはじめ、神奈川フィルや名古屋フィルと共演。
ヴァイオリン:﨑谷直人/三原久遠、ヴィオラ:横溝耕一、チェロ:富岡廉太郎

作品18-6, 130/133  【6月12日(水) 公演Ⅳ 】
次の時代を感じさせるB-dur(変ロ長調)の二作品によるプログラムです。作品18-6の第4楽章序奏ではロマン派を思わせるほどの、執拗なまでのドミナントの連続。大フーガ作品133は20世紀を代表する作曲家ストラヴィンスキーにも「永遠に現代的な作品」と言わしめた、今尚、斬新に響く衝撃を。

作品18-1, 95, 131  【6月13日(木) 公演Ⅴ 】
前半の二作品は同主調(ヘ長調とヘ短調)で書かれているだけでなく、曲の冒頭、第1楽章のテーマがユニゾンで提示されるという共通性があります。後半の作品131で提示されるテーマ自体は、ガリツィン・セット(作品127, 132, 130/133)や、この後に書かれた作品135との共通点も多く見られます。しかし、この作品はいささか特別な趣があります。フーガ→4つのリフレインを持ったロンド形式→レチタティーヴォ風→変奏曲→スケルツォ→序奏→ソナタ形式と、全7楽章それぞれが違う形式やキャラクターを持っていると考えることができて、しかもアタッカで弾くように指示がなされています。ベートーヴェンの中でも最も多様性のある作品の一つであると言えます。

作品18-3, 135, 59-2  【6月15日(土) 公演Ⅵ 】
全16曲の弦楽四重奏曲の中で、最初と最後に書かれた作品18-3と作品135。全体的にも、ラズモフスキーセットの中でも中央に位置する作品59-2。サイクルを総括するにふさわしいプログラムではないかと思います。

サイクル全体としては後期弦楽四重奏曲を、書かれた順(作品127→132→130/133→131→135)にお聴き頂くことも大切なポイントです。
サントリーホール ブルーローズは演奏家の意図をダイレクトにお客様に伝えることが出来る明瞭な響きが魅力的です。私たちウェールズ弦楽四重奏団のベートーヴェンを細部までご堪能いただけましたら幸いです。皆様のお越しを心からお待ちしております。

©Satoshi Oono
  • 【演奏とメッセージ】 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」第1楽章より
    (2022年10月「ARKクラシックス」公演より)

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