移動ができる小型の「ポジティフオルガン」は、そのかわいらしい独特な音色と、シンプルゆえの奥深い魅力に、ファンも多いオルガンです。
楽器・演奏者を間近に見ながら楽しめるサロンのような雰囲気のブルーローズ(小ホール)で、ポジティフオルガンの魅力に触れる貴重な時間をぜひお過ごしください。
「“ポジティフ” ビー アンビシャス!」は入場無料 (事前申込制・指定席制・座席選択可)、4歳よりご入場いただけます。
曲目および申込方法詳細は、下記リンク先ページをご覧ください。
湊 彩花(オルガン) メッセージ
皆様はパイプオルガンと聞くと、教会やコンサートホールにある厳かで煌びやかな大オルガンの響きを想像されるのではないでしょうか。もちろん大オルガンでのコンサートも素晴らしいのですが、今回はポジティフオルガンに焦点を当てた企画ということで、大オルガンとはまた違ったポジティフオルガンならではの魅力を味わっていただければと思います。
ポジティフオルガンの魅力として特に挙げられるのは、パイプ一本一本に風が行き渡り音が鳴るという、パイプオルガンの基本的な要素を耳で感じられるところです。またポジティフオルガンは非常に繊細な楽器ですので、演奏には繊細なタッチとアーティキュレーションが求められます。客席との距離が近いため、演奏者とポジティフオルガンとの音楽的なやり取りを間近で楽しんでいただけることも魅力の一つかと思います。
プログラムは多彩な音色を楽しんでいただけるように、 イギリス、イタリア、オーストリア、ドイツの国々から様々なスタイルの作品を選びました。
前半の聴きどころはモーツァルト作曲の『小さな自動オルガンのためのアンダンテ』です。この曲はある物好きな伯爵によって設立された美術館のコレクションの一つ、時計仕掛けの自動オルガンのために作曲されました。晩年のモーツァルトによる可愛らしくも洗練された音楽は美しい蝋人形の部屋で奏でられ、ウィーンの人々を美術館に集めました。そんな様子を思い浮かべながら聴いていただけたらと思います。
後半はJ. S. バッハの作品、そして彼に影響を与えた北ドイツオルガン楽派の作曲家、G. ベームとブクステフーデの作品で構成しました。
J. S. バッハは15歳の時、リューネブルクの聖ミヒャエル教会の合唱団に所属していました。同時期にリューネブルクの聖ヨハネ教会でオルガニストを務めていたのがベームです。2004年にワイマールの図書館で発見されたベームの作品の写譜は、J. S. バッハが15歳の時に作成したものでした。C. P. E. バッハは、「父はリューネブルクのオルガニスト、ゲオルク・ベームの作品を愛し、研究していた。」と証言しています。
ブクステフーデはリューベクの聖マリア教会のオルガニストを務め、大音楽家として名声を得ていました。若き日のJ. S. バッハがブクステフーデの演奏を聴くためにアルンシュタットから400kmの道のりを歩いてリューベクまでやってきたというエピソードはとても有名です。現在私はそのリューベクに留学しており、J. S. バッハや彼が憧れた大音楽家たちへの特別な想いがあったのでプログラムに組ませていただきました。
彼らが生きた時代は現代のように簡単に楽譜を入手したり、ネットで演奏を聴けるような時代ではありませんでしたが、優れた作品は時代や国を超えて作曲家から作曲家へと受け継がれ、また新しい音楽が生み出されてきたことはなんとも感慨深いです。
いつもよりも近い距離で、一曲一曲を皆様と楽しみながら演奏したいと思っております。ご来場お待ちしております!
山司恵莉子(オルガン) メッセージ
オルガン尽くしの特別な日に演奏させていただけることをとてもワクワク楽しみにしています!
ポジティフオルガンは大ホールのオルガンと比べてとてもコンパクトな楽器ですが、そのサイズからは想像できないような表現力を秘めています。
この公演ではポジティフオルガンの繊細な音色や息遣いを楽しんでいただきたいと思い、ドイツ、イギリス、オーストリア、イタリアなどのさまざまな国とスタイルの作品を選びました。
J. S. バッハの『平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 前奏曲とフーガ ハ長調』はチェンバロやピアノで耳にしたことがある方が多いと思いますが、オルガンでは他の楽器とは異なるあたたかい響きを感じることができるでしょう。
ケルルの『かっこうのテーマによるカプリッチョ』は、かっこうの鳴き声が主題となった変奏曲です。最後にはたくさんのかっこうが登場します。
バードの『女王のアルマン』も変奏曲ですが、ケルルの楽しげな雰囲気とは打って変わって、どこか郷愁を感じさせるしっとりとした作品です。
ベートーヴェンの『ロンド ハ長調』はピアノのために作曲された、楽しげなかわいらしい小品です。天気がころころと変わるなか、軽やかに散歩しているような情景が思い浮かびます。
リゲティの『ムジカ・リチェルカータ』もピアノのための作品ですが、第4曲は「手回しオルガン風」というタイトルの通り、オルガンの響きにぴったりな曲です。怪しげなワルツをお楽しみください。
最後のフレスコバルディの「ベルガマスカ」は、のちにブクステフーデやバッハなど多くの作曲家も自身の作品に取り入れた旋律が主題となり、次々に多彩に変奏されていきます。
16世紀から20世紀までという非常に幅広いプログラムとともに、ポジティフオルガンで時をめぐりましょう!