移動ができる小型の「ポジティフオルガン」は、そのかわいらしい独特な音色と、シンプルゆえの奥深い魅力に、ファンも多いオルガンです。
楽器・演奏者を間近に見ながら楽しめるサロンのような雰囲気のブルーローズ(小ホール)で、ポジティフオルガンの魅力に触れる貴重な時間をぜひお過ごしください。
「“ポジティフ” ビー アンビシャス!」は入場無料 (事前申込制・指定席制・座席選択可)、4歳よりご入場いただけます。
8月11日(木・祝)12:30開演の公演に出演するオルガニスト、猪股友枝のメッセージをお届けします。
曲目および申込方法詳細は、下記リンク先ページをご覧ください。
選曲の意図、コンサートのききどころ
25分という短い時間で、オルガンをよく知らない方から何度も聴いたことのある方まで楽しんで頂きたいという思いでプログラムを組みました。
この公演の前後に大ホールでの公演を聴かれる方が多いと思います。同じオルガンとはいえ大ホールの大きなオルガンと本公演のポジティフオルガンは大きさが全く違います。しかし小さいからと言って魅力に欠けるとは限りません。ポジティフ、とは移動(ポジション)が可能という意味で、建物に付随しているオルガンよりお客様に近く、より繊細なパイプの息遣いを聴いていただけると思います。
時代とスタイルの異なる色彩豊かな音楽をお楽しみ頂きたく、プログラムは3つのセクションで構成しました。
最初の2曲はイギリスバロック作品です。パーセルのヴォランタリーはフランス音楽からの影響が垣間見え、ギボンズのパヴァーヌは、重々しさと可愛らしさの対比と豊かなハーモニーが魅力的です。
次はオルガンといえば……のバッハです。同じコラールを元にした2曲を演奏します。シンプルな書式に込められた洗練された音楽の綾をお楽しみいただきたいです。
最後はハイドンの音楽時計といういわゆる自動演奏オルガンのための作品です。32曲残された中には弦楽四重奏や交響曲から転用されたものもあり、最後に演奏する「ヘ長調 Hob. XIX:32」は交響曲第99番の旋律が用いられています。オルガンは一台でオーケストラとよく言われますが、ポジティフオルガンではどのようにオーケストレーション出来るか楽しみです。
日本とフランスで活動する中で、オルガンや音楽文化において感じる違い
フランスは日本よりもオルガンがより身近にあるということが一番大きな違いでしょうか。
オルガンはヨーロッパの教会を中心に発展してきた楽器なので、教会の数が多いということはオルガンの数も多いということになります。
パリなど大都市ではサントリーホールのような大ホールにオルガンが設置されている所もありますが、日本ほど公共ホールにオルガンがある例は多くなく、オルガンのコンサートの殆どが教会で行われます。
また、日本のオルガンの多くは1970年代以降に建造されたものですが、ヨーロッパには数百年前から残る歴史的楽器も数多く残っています。
教育面においては、オルガン科のある音楽学校やコンセルヴァトワール(文化のための公機関)では早くて7歳からオルガンを習い始めることが出来ます。日本のオルガニストの多くはミッション系の中高でオルガンに出会って続けることになったという例が多く、私は更に遅く、オルガンのある一般大学に入学しそこでオルガンに出会いました。
現在私はフランスの音楽学校で仕事をしていますがオルガン科には9歳から70代までの生徒がいます。
勿論ピアノなどと比べて人数は少ないですが、オルガンに対する敷居は低いようです。
今回のオルガンZANMAI!を通して皆さんとオルガンの楽しさを共有し、もっと身近な存在になることが出来れば幸いです。
猪股友枝(オルガン)
東北学院大学教養学部言語文化学科在学中に今井奈緒子のもとでオルガンを始める。その後フェリス女学院大学音楽学部演奏学科にて宮本とも子、三浦はつみ、早島万紀子に、フランスのカン地方音楽院にてエルワン・ル・プラドに師事。2019年デュドランジュ国際オルガンコンクール第2位および聴衆賞、20年ピエール・ド・マンシクール国際オルガンコンクールのサンフォニック部門第2位。現在フランス・マンシュ県のサンロー公立音楽学校オルガン・ピアノ講師。