アーティスト・インタビュー

チェンバーミュージック・ガーデン
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サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2022
アジアンサンブル@TOKYO

ソヌ・イェゴン(ピアノ) インタビュー

ソヌ・イェゴン(ピアノ)
2013年の仙台国際音楽コンクール優勝、17年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝など、受賞歴多数。これまでにゲルギエフ、ヴァイグレ、オールソップなどの指揮者や、ミュンヘン・フィル、フランクフルト歌劇場管、ボルティモア響などと共演。KBS響の欧州公演ではソリストとして出演。室内楽にも積極的で、ニューヨーク・フィル弦楽四重奏団、ブレンターノ弦楽四重奏団などとツアーを行う。カーティス音楽院、ジュリアード音楽院で研鑽を積み、現在ベルリン在住。 ©Jeremy EnlowThe Cliburn 

ソヌ・イェゴンは、2017年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールや2013年仙台国際音楽コンクールで優勝し、「楽器を意のままに操る技術と表現力」と評価の高い韓国の若手ピアニストです。CMG2020にコロナ禍で来日ができなくなり、今回改めてCMG2022で出演を予定しています。6月10日に「アジアンサンブル@TOKYO」でモーツァルトやブラームスのソロ曲のほか、郷古廉をはじめとする日本の卓越した若い奏者と共にアンサンブルで深い対話を繰り広げます。また、6月11日にはサントリーホール室内楽アカデミーのフェロー(受講生)と共演します。
今回は、2020年のインタビューと新たにお伺いした聴きどころやメッセージを再構成してお届けします。

ソヌ・イェゴン(ピアノ)
2013年の仙台国際音楽コンクール優勝、17年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝など、受賞歴多数。これまでにゲルギエフ、ヴァイグレ、オールソップなどの指揮者や、ミュンヘン・フィル、フランクフルト歌劇場管、ボルティモア響などと共演。KBS響の欧州公演ではソリストとして出演。室内楽にも積極的で、ニューヨーク・フィル弦楽四重奏団、ブレンターノ弦楽四重奏団などとツアーを行う。カーティス音楽院、ジュリアード音楽院で研鑽を積み、現在ベルリン在住。 ©Jeremy EnlowThe Cliburn 

「アジアンサンブル @TOKYO」では、世界で活躍するアジアのアーティストを毎年お招きし、日本人アーティストたちと共演しています。また、今回の来日でイェゴンさんは「サントリーホール室内楽アカデミー」の若い奏者との共演も予定していますが、それぞれの期待をお聞かせください。

音楽の中でも、特に室内楽は、誰にとっても極めて重要なジャンルのひとつだと思います。柔軟性を養い、自分の音を聴きながら共演者の音も聴き取れるような耳を鍛えることができます。室内楽では、全員がひとつにまとまります。他の多くの伸び行くアーティストたちと演奏してきたことで、私自身も演奏家として成長し、今の自分にたどり着くことができました。ですから、サントリーホール室内楽アカデミーの若手演奏家たちと共演することを、非常に楽しみにしています。若い人たちに影響を与え、そして私も彼らから学ぶことができればと思います。

6/11(土)ソヌ・イェゴンと共演するサントリーホール室内楽アカデミーのフェロー(受講生)
ヴィオラ:堀内優里、ヴァイオリン:吉江美桜、チェロ:矢部優典

モーツァルトとブラームス、それぞれのピアノ・ソロと室内楽を取り上げる今回のプログラムの聴きどころ、モーツァルトとブラームスのそれぞれの作曲家の魅力について教えてください。

ある作曲家を理解し、その音楽を十分に楽しむためには、その作曲家の作り上げた多様な演奏形式の楽曲を経験し学ぶ必要があります。そういう意味でも、6月のコンサートにご来場のお客様には、モーツァルトとブラームスにより親しみをもってもらえると思います。
モーツァルトの音楽はよく純粋や素直といった言葉で表現されますが、彼はオペラも作曲しており、私に言わせれば音楽を通して暗い不気味さであったり、あふれんばかりの喜びであったりと、様々な側面や性質を表現するドラマチックな作曲家です。
ブラームスについては、ポリフォニックに表現される複雑な内面の葛藤が面白いと思っています。彼の音楽は常に良いバランスが取れており、演奏したり鑑賞したりすると芯の通った感情や安定性を感じることができます。なお、室内楽アカデミーの若い奏者との共演もブラームスを選びました。ピアノ四重奏曲第1番 第3楽章は、愛に満ちた曲です。優しくて希望に満ちた愛から、焦がれるような愛や溢れんばかりの愛まで、様々な愛が詰まっています。一方、第4楽章では、激しいジプシーダンスが熱狂的なファイナルに向かって炸裂します。

©Ralph LauerThe Cliburn

また、イェゴンさんにとっての「室内楽の魅力」を教えてください。
ピアノ・ソロと室内楽のそれぞれを演奏するにあたって、取り組む姿勢や心持ちに変化はありますか?

室内楽では奏者と聴き手が一体となって、魔法のように自在に変わる柔軟性があり、自然にお互いを刺激し合います。そこに思いがけない嬉しい驚きが生まれます。それこそが、皆さんを笑顔にする室内楽の魅力です。
私がピアノ・ソロや室内楽を演奏する際に取り組む姿勢や心構えについて言えば、どちらに対しても同じアプローチで臨みます。楽譜としっかり向きあう目を持ち、演奏前から演奏中、演奏後に至るまで注意深く耳を済ませて、もちろん想像力を働かせるようにしています。違っていることと言えば、室内楽を演奏する際には、より柔軟性をもって演奏するようにしていることでしょうか。一緒に演奏する仲間にとって信頼できるパレットを用意し、共に自由に筆を取り、聞き手の皆さんのために最高の作品を描き上げられるように心掛けています。

6/10(金)ソヌ・イェゴンと共演 ヴァイオリン:郷古廉/東亮汰、ヴィオラ:田原綾子、チェロ:横坂源

今回で何度目の来日になりますか? また、日本でのコンサートや聴衆などについて、思い出に残エピソードがあれば教えてください。

2013年に仙台国際音楽コンクールで優勝して以来、ほぼ定期的に日本を訪れ、演奏しています。多くの素晴らしい出会いがありましたので、1つを選ぶことは難しいですね。日本には音響の優れたコンサートホールがあり、聴衆の人たちも非常に熱心で、どんな音も漏らさずに耳を傾けてくれます。ですので、ステージで演奏する私たちもより集中でき、音のマジックが生まれやすくなります。
でも1つお伝えできるのは、私は天むすとひつまぶしが大好きだということです。名古屋に行った時は、必ず天むすを買って帰ります。

昨年からのコロナ禍ではどのような生活をされていましたか?
2年越しに実現する来日公演に向けて、お客様にメッセージをお願いします。

皆さんと同じく、コロナウイルスのパンデミックの影響であまり素晴らしいとは言えませんが、この経験は生のコンサートがいかに大事であったか、自分がいかにコンサートを愛していたかということを気づかせてくれました。サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)のコンサートが延期され、2年も日本に来ることができなかったことは残念でしたが、皆さんが健康で、今年の公演でお会いできることを楽しみにしています!

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