アーティスト・インタビュー

特集ページへ

若き音楽家たちによるフレッシュ・オペラ
ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ(椿姫)

村上寿昭(指揮) インタビュー

10月8日(金)「若き音楽家たちによるフレッシュ・オペラ『ラ・トラヴィアータ』」において指揮をつとめる村上寿昭は、ドイツを中心にヨーロッパで数多くのオペラやバレエをてがけ、かつてのホール・オペラ®で数々の名演を残したニコラ・ルイゾッティも厚く信頼を寄せています。
1996年ホール・オペラ®との出会い、今回、桐朋学園オーケストラが稽古を重ねて成長していく様子、ご自身の今後の活動などについて伺いました。

♪ ホール・オペラ®との出会い

私は、1996年グスタフ・クーン指揮でレナート・ブルゾン(バリトン)が歌ったホール・オペラ『ファルスタッフ』の時に、初めてアシスタントをさせていただきました。その後も、ダニエル・オーレン指揮、ニコラ・ルイゾッティ指揮と、何度もご一緒しました。ホール・オペラのチームに初めて参加させてもらったのはまだ20歳の頃で、すごい世界だなとショックが大きかったです。それまで海外のアーティストと毎日顔を突き合わせて何かをするという経験もなく、イタリア語が飛び交って何もわからない中でやっていましたが、若さゆえにできたのだろうなと思います。
その後、私もヨーロッパ、ドイツでオペラをやるようになりましたが、ホール・オペラは“サントリーホールでしかできないすごいもの”という憧れがあり、今回「フレッシュ・オペラ」としてステージに立つことができるという緊張と幸せをかみしめています。

かつて「ホール・オペラ」でサントリーホールに通い稽古をずっと続けていたので、私としては「サントリーホールに育ててもらった」という思いがあります。そのほかのコンサートも聴きに来ていましたので、サントリーホールにはすごく思い入れがあります。今回の「フレッシュ・オペラ」で少しでも恩返しができたら嬉しいです。

村上寿昭(指揮)

♪ 成長する桐朋学園オーケストラ

桐朋学園は音楽大学としてオペラをやったことはありますが、今回出演する学生たちはオペラの経験がほとんどありません。初めての本格的なオペラ経験が『ラ・トラヴィアータ』というのはハードルが高く、通常よりも多く練習回数を設定してやっていますが、毎回すごい意欲で若い人たちが一生懸命喰らいついてくる。それで演奏がどんどん良くなるんですね。すると私もさらにもっと良くしたいという思いがでてきて、皆で目標地点が一歩一歩あがっているというのが今の状態です。もちろんまだ若いオーケストラですから未熟なところもありますが、いろんなことを勉強して理解してきています。歌手がいて歌詞があって言葉があってドラマがあって、それを音にしていくということを、皆で楽しくやっています。オーケストラも歌手の皆さんも、日々「こっちのほうがいいんじゃないか」「こうしたらどうだろうか」と向上心を持ち続けているチームだと思います。
私もそのチームの一員ですし、演出家の田口道子さんを中心に意欲的な空気が伝染して、皆が頭も身体も心も使い、毎日大変ながらもとても楽しい日々を過ごしています。

先日、大ホールでリハーサルをしたときに、オーケストラのメンバーがホールの舞台に立っただけで、客席が目の前に広がっているのを見て緊張していました。本番までにはその興奮と緊張が落ち着いて、それを自分のものにしながら演奏できるのではないかと期待しています。

フレッシュ・オペラ『ラ・トラヴィアータ』 大ホールでのリハーサルより

♪ 「ホール・オペラ®」と「フレッシュ・オペラ」

今回、「ホール・オペラ」のカバーキャストでホール・オペラと同じ演出、同じ舞台を使って行う「フレッシュ・オペラ」を指揮することで、とてつもなく素晴らしいチャンスをいただいたと思います。チームの皆と一緒にやると必ず何かが生まれるので、本当に毎日が幸せですね。今はコロナ禍で我々音楽家にとっても厳しい時間なわけですが、その中でこのような時間を持てるという幸せを日々痛感しています。ホール・オペラの稽古を見学できるのも、若い音楽家にとっては良い経験です。

ニコラ・ルイゾッティ(左)と村上寿昭(右)
ホール・オペラ®の音楽稽古より

♪ これからも良いオペラをつくるチームを育てていきたい

今回、若手から中堅までの歌手の方々と一緒にチームを組んでいますが、そういう場を今後どれだけつくれるか。お客様を感動させられるオペラをつくる活動の場を自分で育てていきたいと思います。そこにはベテランも若手もいるべきで、若い人にはどんどん伸びてほしいし、ベテランにはいろいろ教わりたい。それが実現できる場をつくりたいと、動き始めているところです。

音楽、とりわけオペラはとても奥が深くて広く、一生かけてもたどり着かないくらい大きなものなので、できる限りのことをやり続けたいです。ドイツを中心にヨーロッパではオペラやバレエなどの舞台作品を数多くやってきましたが、やはり日本でオペラをやりたいという思いがあります。
今回、私たちが全身全霊をかけて取り組んでいる魂の『ラ・トラヴィアータ』をぜひ観て、聴いていただけたら嬉しいです。また、その後もどんどん新しいものをつくっていける音楽家でいたいなと思います。

特集ページへ