アーティスト・インタビュー

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サントリーホール35周年記念ガラ・コンサート 2021
ホール・オペラ® ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ (椿姫)

林 眞暎(メゾ・ソプラノ) インタビュー

10月2日(土)「サントリーホール35周年記念 ガラ・コンサート 2021」および10月7日(木)9日(土)「ホール・オペラ® ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ(椿姫)」に出演するメゾ・ソプラノの林眞暎さん。
サントリーホール オペラ・アカデミーのアドバンスト・コース第1期生として学び、2015年アカデミー修了後すぐにイタリアのミラノに拠点を移し、ヨーロッパを中心に様々なオペラに出演するなど、幅広いレパートリーで活躍しています。今回、いま世界の歌劇場で注目されるアーティストとの共演にあたり、意気込みや聴きどころ、ご自身の今後の目標などを伺いました。

今回、ガラ・コンサートとホール・オペラ®で、世界で注目される 3 人の歌手、マエストロ・ルイゾッティと共演されます。リハーサルを通じて共演者から影響を受けたことやエピソードがあれば教えてください。

やはり今回共演する4人に共通して言えるのは、作品に対しての絶対的な世界観を持っていることだと思います。絶対的な世界観をもっているからこそ、演出や音楽の方向性が初めに自分の想像したものとどんなに違っていても、周りが奏でる音楽や表現を自然に受け自然に対応していけるように感じました。もちろんある程度、形を作って“この時にはこの動き、この声質で”などと指示通りに動いているのですが、不思議なことに全てが毎回新鮮で、偶然であり必然であるような錯覚が起きるのです。

ソプラノのマルコヴァさんは、繊細さと力強さを兼ね備えた圧倒的な表現力に驚かされました。彼女が一節歌うだけで周りの空気が変わるほどです。
そしてテノールのデムーロさんは、なんと言っても声の放出力、その声量がとにかく素晴らしいです。ホール全体がビリビリするくらい大きくて、でも不思議なことに全くうるさくはないんですね。なんというか目の覚めるような声で心地がいいです。
バリトンのルチンスキーさんもまた素晴らしい声と声量で、驚くべきはその声を保ったまま長いフレーズをブレスせずに繋げることです。演奏を聴いていただけたらわかると思いますが、本当に彼は必要以上に、いや必要とされるであろう部分であっても息を吸わないんです。息を吸わないで次のフレーズに入ってしまうんですね。“人智を超越する”というのはこういうことなのかと思いました。
そして、指揮のルイゾッティさんは歌手に寄り添いながらも、常に最良のものができるようにテンポだとかディナーミクなど音楽的に様々な仕掛けをしてくださいます。彼のアドバイスのおかげで、今回私が歌うロッシーニのアリアを更に歌いやすく魅力的に仕上げることができました。

ガラ・コンサートとホール・オペラ®では、演奏曲や演奏の形式が違います。それぞれ心がけるポイントなどをお話しいただけますか。またホール・オペラ®『ラ・トラヴィアータ』で演じるフローラの役どころについても聞かせてください。

ガラ・コンサートでもホール・オペラでも、心がけていることは同じですね。どちらにおいても役に入り込むための役作り、その役をさらに際立たせるための音楽作りを欠かすことができません。
『ラ・トラヴィアータ』において主役はヴィオレッタですが、フローラにとっての人生の主役はフローラですから、アリアはなくともフローラをしっかり演じることでオペラを彩ることができたらと思っています。
ちなみに、これまでイタリアで何度もフローラを演じたことがありますが、今回、田口道子さんの演出をきっかけに、私の中でのフローラの世界観をはじめて作ることができました。それまではフローラは私の中でヴィオレッタの友人の1人といった表面的な解釈だったのですが、恥ずかしながら田口さんのアドバイスのおかげで、フローラはなぜ第一幕でヴィオレッタの館に遅れてやってきたのか、なぜヴィオレッタと仲良くするのか、なぜヴィオレッタはアルフレードと暮らす時フローラに居場所も教えなかったのか、これらを理解することによってそれぞれの役との関係性がはっきりして、演技や歌にさらなる自然さ、そして自由さが生まれ説得力のある役となりました。

ご自身の最近の活動や、今後力を入れていきたいことなどを教えてください。

現在イタリアで活動をしており、最近ではメゾ・ソプラノとしてだけでなくコントラルトとしてのレパートリーも広げるようになりました。コントラルトはバロックからヴェルディといったように幅広く役があります。よくバロック、ロッシーニ・コントラルトは声量が足りず、ヴェルディやプッチーニにおけるコントラルトは俊敏性が足りないなどと言われることが多々あるのですが、理想として私自身はどちらも欠けることのないコントラルトを目指したいと思っています。
また、日本だけでなく世界的にもコントラルトは非常に少ないので、なかなかコンサートでコントラルトのアリアを聴く機会は多くありません。私が歌うことで、コントラルトの素晴らしいアリアや歌曲を皆さんに知っていただけたら嬉しいなと思います。

「サントリーホール オペラ・アカデミー修了生によるオペラティック・コンサート」より(2021年3月)
  • 「サントリーホール オペラ・アカデミー修了生によるオペラティック・コンサート」より(2021年3月)

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