10月8日(金)「若き音楽家たちによるフレッシュ・オペラ『ラ・トラヴィアータ』」において、大田原瑶(ソプラノ)と石井基幾(テノール)が、大ホールでの本格的なオペラ・デビューを果たします。
主役のヴィオレッタをつとめる大田原瑶は、サントリーホール オペラ・アカデミーを修了し、現在イタリア・パルマに留学中。また、相手役となるアルフレードには、大田原と同時期にアカデミーを最優秀で修了し、昨年テノールに転向した石井基幾が急遽大抜擢となりました。
おふたりにとってさらに飛躍するチャンスとなるこの公演の直前に、意気込みや聴きどころなどを伺いました。
「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ(椿姫)」でのそれぞれの役どころを聞かせてください。
大田原 私はヴィオレッタを歌います。大学時代から勉強を続けてきた役で、部分的に歌ってきたのですが、いつかはオペラ1本をやってみたいというのが夢でした。今回、こんなに早く出演のお話をいただいてとてもうれしいです。
ヴィオレッタはとても人間味のある、皆が共感できるところを持っているキャラクターで大好きです。私自身、歌っていてとてもしっくりくるので、いつも歌いながら気持ちがどんどん役柄に入りこんでしまいます。お客様にも共感していただけるヴィオレッタを歌いたいと思います。
石井 僕はヴィオレッタに恋心を抱くアルフレードを歌うことになりました。すごく純粋な心を持っている青年、というのが第一印象です。ちょっと感情的になりすぎるところがありますが、そのためにドラマが生まれると思います。
『ラ・トラヴィアータ』は、登場人物それぞれの立場で物語をみると、いろいろな見方ができるさまざまな印象を持つオペラです。どの役が欠けても物語が成り立たないので、出演者それぞれの思いをのせた公演が実現できるといいと思っています。
僕自身は、『ラ・トラヴィアータ』のテノール3役はすべて勉強してきましたが、今回せっかくチャンスをいただいたので、アルフレードを一生懸命歌います。
今回のフレッシュ・オペラで初めてオペラを観るお客様もいらっしゃると思います。
聴きどころ、見どころを教えていただけますか。
石井 僕自身、サントリーホールではブルーローズ(小ホール)でオペラを演じたことはありますが、大ホールは今回が初めてです。これまで稽古を重ねてきて、とても素晴らしい舞台になるとわくわくしています。お客様にとっても、この公演がオペラを観るきっかけになるとしたら、とても印象深い公演になるに違いありません。大ホールの『ラ・トラヴィアータ』の世界にぜひ、どっぷりと浸かっていただきたいと思います。
大田原 今回の田口道子さんの演出はとてもシンプルで伝わりやすく、それぞれの感情に沿った動きに音楽がのっている、という感じです。ひとりひとりにスポットを当ててみれば、今どういう思いで歌っているのかがわかりやすく、また全体を俯瞰してみると、よりオペラの魅力が伝わると思います。
石井さん、大田原さんとも「サントリーホール オペラ・アカデミー」で学んでこられました。
これまで研鑽を積んできたことが、今回の舞台にどのように生かされるでしょうか。
石井 アカデミーで勉強したことは、いまの自分にすべてつながっています。アカデミーで培った細かいベースの部分は、大きなオペラを1本演じる時にも必要なもので、これまで勉強して貯めてきたものを今回の舞台で披露する、という気持ちです。アカデミーで勉強してきたことが自分にとって揺るがないものに変わってきている、という実感があります。
大田原 今回の田口さんの演出では、イタリア語の知識はもちろん、イタリア語の中で自然に生きているかのように演じることが求められています。これらのことは、アカデミーで多くを学んできました。また、同じアカデミーで勉強した仲間とは、相手に歌いかけた時の反応や、言葉の受け渡しなどがスムースでとてもやりやすいです。信頼感をもって演じることができます。
おふたりにとって、今回の『ラ・トラヴィアータ』の舞台はさらに飛躍するチャンスになることと思います。今後の活動予定や目標を聞かせてください。
大田原 私はこの後、イタリアのパルマ音楽院での修了リサイタルが控えています。また、オーディションをいろいろ受けて、イタリアで活動の範囲を広げたいと思っています。将来的には海外の劇場や、日本各地の様々な会場で歌えればうれしいです。
石井 僕はテノールに転向して1年半が経ち、レパートリーが変わりましたので、オペラの主要な役をアカデミーであと2年、勉強します。サントリーホールのアカデミーで長く勉強した経験を大いに生かして、ぜひ海外にも挑戦したいと考えています。