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Vol.22

《白綸子地梅に熨斗蝶模様打掛》

―ちょうちょは夫婦円満の象徴―

《白綸子地梅に熨斗蝶模様打掛》 一領 江戸時代 19世紀 サントリー美術館
《白綸子地梅に熨斗蝶模様打掛》
一領 江戸時代 19世紀 サントリー美術館

白綸子地の打掛に、金や薄紅色の梅の花が散らされ、中央には一本の梅の樹がのびています。そして、赤と青の熨斗蝶は、この梅の香りに誘われて群れ飛んでいるようです。

さて、この打掛にあしらわれている熨斗蝶は、蝶花形、または、雄蝶雌蝶と呼ばれる折形をもとにした文様です。雄蝶雌蝶は、紙を折り、水引をかけて蝶の形にし、ハレの場の酒器などに取り付けて用いられてきました。現代でも、お正月などに御神酒徳利に飾られることがあるようなので、目にした事がある方もいるのではないでしょうか。また、婚礼の場で盃に酌をする男女の童子を同じく雄蝶、雌蝶と呼ぶこともあると聞きます。

蝶は古くから長寿など様々な意味が託されてきましたが、夫婦円満の象徴でもあったようです。例えば、『女訓百人一首錦鑑』(岐阜市立図書館蔵)(池田東籬編、京都・津逮堂吉野屋仁兵衛、1834年)の「蝶花形」の由来には、銚子の口に雄蝶雌蝶を付ける理由として、「蝶はただつがひ離れざるよりつくる事也」と記されています。そのほか、当時の婚礼指南書には、婚礼の場における雄蝶雌蝶の酒器への取り付け方や、それを用いた盃事の行い方などが、挿絵付きで詳しく説かれています。この様な本を手に取る機会のあった人々にとって、雄蝶雌蝶はなじみ深いものだった様子がうかがわれます。

部分拡大図
部分拡大図

また、この打掛は、三襲と呼ばれる、白・紅・黒の三領一組の打掛のうちの一つであった可能性が指摘されています。三襲は、武家の礼装として祝賀の席に広く用いられていましたが、やがて富商や豪農の婚礼衣装としても使用されるようになりました。実は、本作とほぼ同じ文様の三襲が女子美術大学美術館に収蔵されています。さらに、同種の文様があしらわれた作品も複数見受けられます。この打掛は、夫婦円満の意味を託された人気の婚礼衣装だったようです。

(学芸員・宮田悠衣)

2023年2月27日
出典:『サントリー美術館ニュース』vol.282, 2021.3, p.7

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