三十二種の職人を左右二組に分け、その詠歌の優劣を競う架空の歌合を描く。職人の姿は歌仙絵に倣った坐像ではなく、仕事に従事する個々の空間ごと描かれており、主たる興味は職人の営みを表すことにあったようだ。特に応仁・文明の乱後は、経済の発展に伴って都市にはさまざまな職業が増加した。画中の和歌は、貴族が職人に仮託して詠んだ機知に富むものであり、職人たちに関心の目を向けたのもまた貴族たちであったことがうかがえる。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)