もとは『新古今和歌集』巻四・秋歌上より抜き出した二十八首を散らし書きにした、全長二十メートルにも及ぶ長巻だったが、戦後に裁断されて諸家に分蔵されたものの一つ。全巻を通して地面や霞に刷かれた金銀泥によって、秋の一日の早朝から夕暮までの時間経過が叙情的に表されている。前半部分にあたる本作では、鹿がうずくまって右上から左下へと列をなす様子が描かれ、光悦は鹿を包み込み、空間と調和するようにゆったりと和歌を記している。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)