説経「苅萱」の絵入本。絵画化された説経として現存最古のものと推定される。世の無常を感じた加藤重氏は、妻子を残して出家し苅萱道心と名乗る。やがて、息子が父をたずねて高野山へ入るが、道心は父と明かさずに息子を突き放し、一人信濃善光寺に移って往生をとげた。高野山で出家した息子も同日同刻に息を引き取ったという。本文と同筆とみられる絵は、素朴絵の極致と評される。奔放でありながら信仰心に支えられたその表現は、見る者を魅了してやまない。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)