都に住む鼠の権頭は、子孫を畜生道から救うため人間と結ばれたいと清水寺に祈願し、そこで出会った美しい姫君と結婚を果たす。しかし、鼠であることが露見し破局を迎えた権頭は、悲しみのあまり出家して高野山に入ったという。画中には人名や俗語を用いた台詞も書き込まれ、詞書では語られない鼠たちの生活音が聞こえてくる。宴の準備に忙しい厨房の光景は、当時の飲食を描いた風俗画としても注目される。お伽草子絵巻のなかでも代表的な作品。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)