茶湯釜には真形など端正で正統的な形のもの以外に、富士や俵、束柴、香炉など、さまざまな形をかたどった釜が作られた。これもその一つで、深編笠をかたどり、編目を細かく鋳出している。口から肩まで反りのある円錐形に開き、底は丸く作り出す。この美しい末広がりの形が引き締まった安定感を与えている。鐶付は松の実をかたどり、太い鈕の一文字蓋が添う。茶釜の名産地である筑前国(福岡県)、遠賀川河口の芦屋で桃山時代に製作されたものとみられる。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)