幕末から明治にかけて活躍した、画家であり漆芸家である柴田是真の作。全体に是真が得意とした青銅塗を施し、金銀の蒔絵、多様な色漆、金の薄板や青貝などで、器表面に五節句にちなむ文様を描く。手鞠と大根で七草の節句の人日、瓢箪の徳利と桜で桃の節句の上巳 、太刀と双葉葵で端午の節句、梶の葉に筆で七夕、野菊の折枝で重陽の節句を表す。季節の節目を祝う五節句の表現が、伝統を踏まえた隠喩的モチーフによって一つの手箱のうちに構成される。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)