そっきょうかげぼしづくし ねあがりのまつ うめにうぐいす しおびきさけのさかな ちゃがま
「即興かげぼしづくし」と題したこの揃物には、小道具とともにポーズをとり、障子に映し出た影で、形を作るという滑稽な遊びが数々描かれている。このような遊びは主に酒宴の席で幇間などが興を盛り上げるために行ったものである。本揃物は、彼らの手本として、また単なる笑い種として、人々に享受されたのだろう。「根上りのまつ」では、上半身裸で笠を被った股引姿の男性が、両手に同じく笠を持ち、肩にも笠を掛け、さらには丸盆を胸のところでおさえ、中腰で立っている。「根上り」とは、木の根が地上に現れ出ている状態をさすが、その根の様子を両足と股引から垂らした帯紐で表している。「梅に鶯」では、裸の男性が羽織を頭から被り、少し開いた扇子を頭上に掲げ、鶯の嘴に見立てている。腰帯にすりこ木と菜箸を挟みいれ、後ろに曲げた右足の指に煙管を挟む。梅の花を表しているのは、遊郭で客を引き留めるまじない用の括り猿であろう。(『のぞいてびっくり江戸絵画 科学の眼、視覚のふしぎ』サントリー美術館、2014年)
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