「高輪帰帆」はしばしば浮世絵などで用いられる伝統的な題だが、ここではアルファベットで記され、文明開化の光景が描かれる。橋の上から丁髷姿の人々が、煙を出す蒸気機関車を眺めている。これは線路見物に絶好の場所であった、高輪の八ツ山橋を表したものだ。海には蒸気船が浮かび、灯台も見える。高輪付近の線路2.7㎞は海上に造った築堤の上に線路が通されており、その大胆な計画ゆえか大きな注目を集め、本図をはじめ多くの浮世絵に取り上げられている。(『激動の時代 幕末明治の絵師たち』、サントリー美術館、2023年)
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