双六は、江戸時代には人々の娯楽として普及していた。出た目の数だけ進める「回り双六」からはじまり、出た目の数によって指定されたマス目に飛ぶ「飛び双六」も生まれた。本図は世界各地を双六で巡る趣向である。画面右下に見える振り出しの大日本東亰(とうけい)・日本橋からはじまり、横浜、亜細亜(アジア)洲、支那、暹羅(シャム)、印度(インド)、邉留社(ペルシャ)、荒火屋(アラビア)、土畱古(トルコ)、魯西亜(ロシア)、阿弗利加(アフリカ)州、衛土府都(エジプト)、比羅三井天(ピラミッド)、茂禄子(モロッコ)、りべりや(リベリア)、戸仁須(トニス、チュニジア)、戸里堀(トリポリ)、欧羅巴(ヨーロッパ)州、仏蘭西(フランス)、倫里(パリス)、西班牙(イスパニア)、葡萄牙(ポルトガル)、伊太里(イタリア)、獅子里嶋(シシリア)、希臘(ギリシア)、墺地利(オーストリア)、普魯士(プロシヤ)、べるりん(ベルリン)、瑞西(スイス)、和蘭(オランダ)、白耳義(ベルギー)、嗹国(デンマーク)、瑞典(スウェーデン)、亜米利加洲(アメリカ)、華盛頓(ワシントン)府、南亜米利加、めきしこ(メキシコ)、波以知(ハイチ)、さんどみんご(サンドミンゴ)、ころんびや(コロンビア)、ぶらじる(ブラジル)、ちり(チリ)、英吉利(イギリス)龍動(ロンドン)で上がりとなる。各地の挿図が添えられるが、例えばピラミッドは緑の山のように描かれている。モノクロの版画類を参照したのか、描写に不正確なところもあり、当時の世界認識を今に伝えている。(『激動の時代 幕末明治の絵師たち』、サントリー美術館、2023年)
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