えどざくら
明治29年に九世団十郎が歌舞伎座で助六を演じた。その暮れには団州か助六の押絵羽子板が出回り、翌年の新春にはそれを手にした娘が見かけられたという。傘と箱ちょうちんの簪は当時の写生をもとにして、昭和7年の三十年追遠興行が行われた際にこの作品を制作している。「団十郎の助六は明治二十九年時五月の歌舞伎座が最後にて この絵の羽子板をもてる娘は明治三十年の初春風俗になるわけなり 芝居の東西うづらには引手茶屋の紺のれんをかけまわし 松に桜の絵をかいた餅をかけ青すだれを巻きあげた客席までそんなふうに装飾した 羽子板の地は乃ちそれを利かせたり 娘のさしてゐる傘と箱てうちんのかんざしはその時のもの 当時の写生を用ひたり 以上どうでもよいことなれど興味をもつ方の為あれと一筆」「明治二十九年九世団十郎歌舞伎座に助六を演ず/この図描くところあくる三十年初春の下町娘風俗にて/羽子板の押絵は団州か助六なり 昭和七年三十年追遠興行/行われる際にこれを作る」(『清方ノスタルジア 名品でたどる鏑木清方の美の世界』、サントリー美術館、2009年)
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