まつたかず びょうぶ
『本朝画史』に「舞鶴奔蛇」「怪々奇々」と評された狩野永徳(1543-1590)の「大画」様式による巨木表現は、文字通り、桃山時代に一世を風靡した。その凄まじいまでの影響力は、近世に入っても屛風や襖絵などの大画面制作において、様々な形で展開を見せている。この松鷹図屛風もその動向の流れの延長線上に位置する作例であろう。右隻には金箔を押した金地に枝を伸ばした松の巨木が大胆に描かれ、その枝先に猛禽である鷹が羽を休めている構図を示す。「聚光院襖絵」など、永徳による巨木表現が、元信の花鳥画様式に基づいて大地にがっしり根を張る描写をことさら強調したのに対して、ここでの巨木の根元の描写は画面下方に消えており、筆勢の気迫あふれる表現よりも、金地の華麗な装飾性を重視する傾向が見て取れる。また絵師の空間を把握する力量の差もさることながら、そこには戦乱の世から政治的安定へと移行したことによって生まれた時代の気分の変化も看取される。(『夢に挑む コレクションの軌跡』、サントリー美術館、2011年)
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