しき かちょう ぐんじゅうず びょうぶ
画面向かって右隻には、海棠や牡丹などの花木や、山羊や兎、麝香猫、鹿といった走獣の仲間を中心に描き、左隻には芙蓉や菊、女郎花、藤袴などの草花と、鴛鴦や鴨の群れなどの鳥を中心に描く。ゆるやかに右から左へ四季の移り変りをみせている。とくに獣たちの姿態や表情は、いずれもどこかユーモラスで、画家の内面性が伝わって来るようである。この八曲一双という異例な画面形式の屛風には、「山雪」白文丸花印が捺されているが、他の現存する作例とは異質な特徴もうかがわれる。松本山雪は、かつては狩野山雪と画号を同じくすることから混同されることも多い絵師であった。しかし矢野徹志による一連の研究調査(「伊予の画人 松本山雪研究」、国華一三三六号、2007年など)によれば、「松本家家系図」に拠って延宝4年(1676)に没した画家であることが判明している。江戸時代前期における松山藩の御用絵師であり、その筆致や作風には山楽、山雪が活躍したいわゆる京狩野に共通した要素も見受けられるとされる。(『夢に挑む コレクションの軌跡』、サントリー美術館、2011年)
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