作者

伝 狩野永徳

数量・員数

六曲一双

寸法（単位cm）

（各）縦152.3　横357.2

制作年代

桃山時代   16世紀

　左右両隻にわたり、ゆるやかに四季の移り変わりを加味しながら、中国の水辺を囲む山水を水墨によって表現している。この屛風の左右両隻には、「州信」朱文円廓壺形印が捺されているが、「州信」印は狩野永徳（1543-1590）が使用した印として広く知られた印である。ただし、その遠山の形態感覚や岩の皴法は、大徳寺聚光院襖絵などに典型的に見ることのできる永徳その人の筆致とするにはやや開きがあり、異論も少なくない。可能性としては、永徳周辺において集団制作の一翼を担ったであろう周辺絵師が制作を担当したのではないかと推測することもできる。現段階では永徳自身が手がけた現存する遺品は残念ながら数点に過ぎず、行体山水画としては比較すべき基準作がないために判断がむずかしいが、「二十四孝図屛風」（福岡市博物館所蔵）などに同じ傾向がうかがわれよう。先行して狩野派の活動の基盤となった元信様式の行体山水図の系譜に位置づけられるべき要素は各所に認められる。ただし、とくに遠山の表現に注目すると、前後に少し窮屈なほどに密集する形で配置されており、整然とした空間構成とは言い難い部分もうかがわれる。永徳の様式を探る上で、今後、より詳しく比較検討すべき作例であろう。（『夢に挑む　コレクションの軌跡』、サントリー美術館、2011年）