せっちゅう かちょうず びょうぶ
雪が降り積もった山野の水流の辺に、鳥たちが快活に遊んでいる。各所に刷かれた金泥が画面に明るさを添えている。狩野元信(1476-1559)が得意とした行体の水墨画の花鳥図屛風である。左右両隻を通じて共に冬の雪景を描くが、左右両隻の間では空間の連続性を欠いている。一方で、両隻を通じて主要なモティーフとなる雌雄の吐綬鶏は、左右両隻で位置と大きさを変えて描かれていることから、元々六曲一双であるとすれば異例であり、当初から六曲一双であったかどうかについては疑わしい部分もある。しかし左右両隻の樹木の枝振りや鳥の描法はきわめて類似しており、同時期の元信工房の制作とやはり推定される。各所に数種類の鳥が数羽ずつ密集する形で描かれている点も注目される。左隻左端下には「狩野法眼元信七旬有九筆」の款記があり、「元信」朱文壺形印が両隻に捺される。吐綬鶏の腹部には淡紅が施されるが、基本的には水墨の濃淡のみで仕上げられている。その空間の構成原理は元信印を捺す「花鳥図屛風下絵」にみられる左右両端に巨木を据える構図と共通する面も多いが、むしろ白鶴美術館本の「四季花鳥図屛風」に奥行きや空間配置が近いとも言えよう。(『夢に挑む コレクションの軌跡』、サントリー美術館、2011年)
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