しんくろうど ものがたり えまき
ある中流貴族の家に、一男三女の子どもがいました。彼らを自由に育てたいという両親の教育方針により、三姉妹はそれぞれ自分の道を選択していきます。三女は、男装して生きることを望み、蔵人(天皇の側近)を務めていた兄と一緒に宮仕えすると、「新蔵人」と呼ばれるようになりました。やがて帝に正体が露見するものの、かえって珍しく思われた新蔵人は懐妊し皇子を産みますが、しばらくして帝の愛が冷め、新蔵人は尼となった長姉を頼って出家しました。以上の内容のうち、当館所蔵の一巻は物語の前半部(上巻)に相当します。15~16世紀にかけて流行した、縦が20㎝以下の小型絵巻を「小絵(こえ)」と言います。なかでも本絵巻はとりわけ小さく、縦が11㎝しかありません。墨線のみによって描かれた「白描」の小絵は、素人絵師による私的な作例と考えられ、特に女性筆者の伝承を伴うものが多くあります。男装の姫君という、性別の枠を飛び越えたニューヒロインも、女性の視点から生み出されたのかもしれません。文庫本サイズの絵巻ならば、女性の手にすっぽり収まります。(『リニューアル・オープン記念展Ⅱ 日本美術の裏の裏』、サントリー美術館、2020年)
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