さいぎょうものがたり えまき ちゃくしょくぼん
平安時代後期の歌人として有名な西行(1118-1190)は、鳥羽院の北面の武士(俗名・佐藤義清)であったが、二十三歳の時に出家し、諸国を行脚しながら仏道と和歌の道に残る半生を費やした。この人生が人々の篤い敬慕を受けてか、鎌倉時代には既に、彼の行状を描いた絵巻制作が行なわれていたことが知られる。『西行物語』および『西行物語』を絵画化した「西行物語絵」は、写本、絵巻、版本などの形で大量に伝わっているが、本文の内容によって、①広本系、②略本系、③釆女本系、④永正本・寛永本系の四系統に分類することができる。本作品は、略本系の一本である。西行の没後間もなく伝説化された物語は、多くは名所めぐりの形を取り、のちには四季物語と呼ばれることにもなるような構成を取っていたところに、自然と人生に対する、中世の人々の想像力のあり方がよく表われている。この著色本は、古典的なやまと絵の伝統を踏まえ、名所絵、四季絵的な要素を十分取り入れ、人物を小さく、自然景を重視した画面構成をとっている。また、歌人西行の行状を表わすのにふさわしい歌絵の伝統をも色濃く残しており、繊細で情緒性の強い画風となっている。もとは松山の松平讃岐守家の所蔵であったと考えられている。(『「もののあはれ」と日本の美』、サントリー美術館、2013年)
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