じょうるり ものがたり えまき
三河国矢矧の宿での、源氏の御曹司・源義経と浄瑠璃御前との一夜の逢瀬の物語で、義経伝説の一つ。金売吉次に伴われ奥州へ下る途中、義経は矢矧の宿で三河国司・源中納言兼高が矢矧の長者という遊女の間にもうけた浄瑠璃姫と、笛がとりもつ縁で知り合い、これと契りをかわす。再び東へ旅立った義経はやがて病にかかり、盗賊の難にあうが、正八幡の加護と姫の看護で蘇生し、再び奥州へ向かう、というもの。全十六段で構成されており、近世初頭から繰り返し芝居で盛んに上演された十二段講成のものより古様を示すと言われている。成立年代は不明ながら、室町時代より語り物として行われていたようである。本絵巻は、華やかな色彩を持つ繊細な画風で、伝統的な大和絵の手法により成るが、奈良絵本的な稚拙さも幾分含んでいる。風景の描写に優れ、とくに上巻に登場する長者の屋敷の贅を尽くした庭園では、四季の花が咲き乱れ、極楽浄土を思わせる見事な景色をつくり出している。(『「もののあはれ」と日本の美』、サントリー美術館、2013年)
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