きり ほうおう まきえ しょう めい さおしかまる
本作は、鎌倉時代の僧・行円(1159~?)が制作した笙という楽器です。口を付けて吹く部分を頭(あるいは匏)と呼びますが、ここに施された鳳凰文の金蒔絵は後世に付け加えられたものと思われます。 本作を収める箱と付属品は、本作の旧蔵者で、稀代の楽器コレクターとしても知られる紀州藩第10代藩主・徳川治宝(1771~1853)が誂えたものです。 外箱の木口には紀州徳川家の蔵品章が貼られています。黒漆塗の中箱の蓋には「小男鹿丸」と金蒔絵で記されています。内箱は叢梨子地という地文様に、徳川家を示す葵紋が金蒔絵で散らされています。 このほか、笙を入れる本袋や、笙を寝かせるときに用いる枕、金糸で葵紋を織り込んだ略式の替袋、中箱の銘の下書、楽器商・神田家による鑑定書などが付属します。厳重かつ豪華な箱からは、本作を手に入れた治宝の深い感動に触れる思いがします。(『サントリー美術館 開館60周年記念展 ざわつく日本美術』、サントリー美術館、2021年)
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