げんじものがたり がじょう
『源氏物語』の典型的な場面を一帖毎に約一七センチ四方の小画面に描いた絵と詞書を一組として、計五十四組をひとつの画帖にまとめたものである。色彩は淡く透明感があり、優美、精緻な筆で丹念に描き込まれている。各人物の人形を思わせる可憐な表情や樹幹の形態、樹葉表現などは如慶の源氏絵の典型作品と言える。住吉派は近世初期の障壁画などの大画面全盛の世にありながら、小画面の中に美を追求し、源氏や伊勢などの古典物語絵や歌仙絵、社寺縁起絵など、やまと絵の伝統的題材を扱った作品を多く描いた。如慶(1599-1670)はその住吉派の開祖であり、土佐派から出て、のちに徳川幕府に迎えられ、子の具慶とともに江戸やまと絵の新しい世界を開拓した。作風はやまと絵を基礎として伝統的な題材を扱っているが、他の流派の技法や様式を学んだ様子も窺われる。なお、本作品の詞書は全段を通じて園基福(1622-1699)の筆になるものである。(『「もののあはれ」と日本の美』、サントリー美術館、2013年)
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