してんのうじすみよしたいしゃさいれいずびょうぶ
摂津国を代表する名所である四天王寺と住吉大社を、六曲一双の屛風に描くことは江戸時代前期から行われたと推定される。中でも本図はとくに風俗描写に関しては群を抜いて優れている。四天王寺の境内には満開の桜が描かれるが、石舞台の周辺では、四月二十二日に行われる聖徳太子の御霊を慰める聖霊会が執り行われ、舞楽を奉納する様子である。四天王寺近辺では清水が湧き「天王寺七名水」と称された。一つは金堂下に湧くという白石玉出の水で、境内の亀井堂に引かれている。もう一つは左端に描かれる逢坂の水で桶に汲んで運ぶ人が描かれている。四天王寺は清水の聖地でもあったのである。また歌枕ともなった住吉は今の大阪市住吉区の周辺で、海岸に松原が続く景勝地であった。住吉大社(住吉神社)は航海の守護神、和歌の神として信仰を集めた。画中の境内では、七月末に行われる大祭の様子が描かれており、反り橋の上を男たちが御輿を担いで渡御する様子が見える。また住吉神は伊弉諾尊の禊祓により現れた神でもあり、穢れを清める水の聖性を象徴する。画中の住吉の浜では、夏越の祓いに合わせて、海水を浴びて禊する人々が描かれている。(『水―神秘のかたち』サントリー美術館、2015年)
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