ひむろのせっくず
富士の勇姿も氷を載せて急ぐ一行も闇に包まれることなく明快に描かれる。しかし松明の灯かりで夜の景と知れる。このように夜景を示す記号として灯かりを描くことは、日本美術では常套的手法であった。氷室の節供は陰暦6月朔日の行事で、江戸時代、加賀前田家が富士氷室の氷を将軍家に献上した。本図は夜中江戸城へと急ぐ一行を描いている。渡辺始興(1683-1755)は京都の近衛家に仕えた画家で、初め狩野派に学び、後に尾形光琳の影響を受けて装飾的な画風の作品を残している。(『西洋の美・日本の華 サントリーコレクション ―屛風・うるし・やきもの・南蛮美術・印象派・モダンアート』、サントリー美術館、2000年)
作品名、作者名、制作地・様式などのキーワードで収蔵品の検索ができます