いつくしま あまのはしだてず びょうぶ
右隻には天橋立、左隻には厳島の景観を、それぞれ鳥瞰図的な視点で描いた屛風である。右隻の天橋立は歌枕ともなった名所で、現在の京都府宮津市の江尻から宮津湾に向けて突き出た全長約三キロメートルの砂州であり、白砂青松の美しさで知られる。一方、左隻の厳島は広島湾南西部の島で、北岸に厳島神社と門前町がある。安芸の宮島と呼ばれ紅葉の名所としても知られる。厳島神社の社殿は海中に立ち、大鳥居・朱塗の殿堂・五重塔・千畳閣・能舞台などがあるが、現在の本殿は元亀2年(1751)に毛利元就・輝元によって造営されたものである。近世末には、松島と併せて日本三景の一つに数えられた。まさしく風光明媚な景観描写の中に、古くからの海にちなむ信仰の歴史や伝説が画面から読み取れる名所図屛風である。(『水―神秘のかたち』サントリー美術館、2015年)
作品名、作者名、制作地・様式などのキーワードで収蔵品の検索ができます