いせものがたり ず しきし みずかがみ
百二十五段本『伊勢物語』の第二十七段「水鏡」に取材した作品。一夜限りで来なくなった男を恨み悲しむ女が、盥の水に自分の姿が映るのをみて、自分のほかにもうひとり物思う人がいた、と歌を詠むのを男が立ち聞きするという場面。やまと絵の伝統に新しい解釈と機知を加え、独自の様式を確立した俵屋宗達の筆と伝えられる。『伊勢物語』の主題は宗達および宗達派にとって主要な画題であり、現在も数多く知られている。これらの作品は《嵯峨本伊勢物語》や《異本伊勢物語》など、先行作品の図様を参考に宗達と工房の絵師により共同制作されたものと考えられる。宗達筆と伝えられる《伊勢物語図色紙》は、益田家旧蔵の三十六面をはじめ、現在五十九面の作品が確認されており、金銀泥を地に刷き、鮮やかな顔料を使用して描いており、いずれも質の高い優美な作品となっている。なお、本作品の詞書は近衛信尋の子尚継の筆跡と判定されている。(『「もののあはれ」と日本の美』、サントリー美術館、2013年)
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