ふくろもの まきえ たんす
長方形、倹飩扉をつけた箪笥で、銅製の錠金具と天板にはやはり銅製の提鐶をつけている。内部は四段に分けられ、四個の引出を納めるが、最も高さのある下段のものの右下には、別に区画をつくり小引出を納める。各引出には紫韋の引手がつけられている。文様は各面に稲妻菱文、唐草に桜紋、変わり輪繋文、竹に鳳凰丸文、亀甲文地に浮線綾、花目亀甲文、雷文繋などの種々の文様の仕覆を描く。技法は、総体黒漆塗に金・銀の平蒔絵を主にして薄肉高蒔絵、描割を交えている。江戸時代初期には室町時代以来の伝統的様式と桃山蒔絵の新様式とが併存しているが、本品は高台寺蒔絵を基本にしながら新しい感覚によって洗練発展させた、新様の一つの例である。即ち技法的には極めて単純なものでありながら、気のきいた文様構成によって、おもしろい効果をあげている。本来一定の法式の中に組み入れられその役割を果たすべき仕覆を、なにか楽しげに踊っているかのように配した意匠力は巧みである。(『開館20周年記念 サントリー美術館100選』、サントリー美術館、1981年)
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