なんばんそう じんぶつ まきえ ぞうげ ぐし
南蛮船に見たこともない様々な物を積んで海の向こうからやってくる南蛮人は、当時福の神にも見立てられた。それにより、福の神の仮装と同列で南蛮人の仮装も行われ、また南蛮人自体をデザイン化し、一種の吉祥文様として多様な器物の意匠とした。 本作は象牙の櫛で、広くとった棟と歯の部分にかけて、金銀の蒔絵や付描(つけがき)、色漆や螺鈿などによって猿引をする南蛮人の格好をした人物を描き、裏面には同様に南蛮装の人物が犬を引く姿を描く。南蛮人の硬い表情のマスクが、猿の写実的な表情と対照的である。猿は剣先烏帽子を被り、左前足に鈴を持ち、右前足は後ろに廻して扇を持つ三番叟を舞う姿。五穀豊穣を寿ぐ舞と、福を呼ぶ南蛮人の姿を組み合わせた縁起の良い意匠の櫛ということになろう。(『リニューアル・オープン記念展Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY』、サントリー美術館、2020年)
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