はな もよう かんえい しょうほう ごろ
《花模様》は清親の数少ない美人画のシリーズで、慶長年間(1596~1615)から天保年間(1830~44)までの十期を取り上げ、各時代を代表する女性を描く。いずれも大判錦絵三枚続のワイド画面に大首絵の女性を大きく配した大胆な構図となっている。また、絵や時代に因んだ俳句や狂歌が添えられている。各所に空摺や正面摺などの凝った摺技術が多用されており、本シリーズに対する清親と版元の力の入れようが伝わってくる。 No.109(《花模様 寛永正保頃》)は、目録には「遊女風呂屋帰りの図」とあり、風呂屋から戻った遊女が手紙を読む姿が捉えられている。色紙形には吉原の三浦屋抱えの名妓・高尾の真蹟色紙が描かれ、『花街漫録』から写した旨が記されている。内容は『拾遺和歌集』収載の和歌で、「恋すてふ我なはまたき 立にけり 人しれずこそ 思ひそめしか」とある。背景の人物たちは、寛永年間(1624~45)の制作とされる《彦根屏風》(彦根城博物館蔵)や《湯女図》(MOA美術館蔵)の表現を意識していると思われる。(『リニューアル・オープン記念展Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY』、サントリー美術館、2020年)
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